2004 Fiscal Year Annual Research Report
植物の被食防衛と腐食連鎖を結ぶポリフェノール化合物の生態系生態学的研究
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15370011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北山 兼弘 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (20324684)
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Keywords | ポリフェノール物質 / ポリフェノール-タンパク質結合 / 難分解性有機物 / 土壌水 / 窒素溶脱 / 土壌有機物 / 生態系生態学 / 腐食連鎖 |
Research Abstract |
この研究の目的は、植物の2次代謝産物であるポリフェノール物質の森林生態系における生葉-リター-土壌ループでの挙動を明らかにすることである。今年度は、常緑樹林内に設置したライシメーターから土壌水を採集し、この土壌水中の溶存ポリフェノール濃度とポリフェノールに結合保護されているタンパク質濃度の定量方法を確立した。まず、土壌水を樹脂カラムDAX-8に通し、溶存有機物の分子量に応じてそれが大きい疎水性と分子量の小さな親水性の画分に分画した。疎水性の画分に含まれるタンパク質を6N塩酸で高温(120℃)の下に加水分解し、遊離したアミノ酸を高速液体クロマトグラフィーにより定性・定量した。この手法を確立することにより、溶存タンパク質の約80%を回収することに成功した。確立したこの手法を用いて、実際の森林の土壌水にどの程度のポリフェノール-タンパク質結合体が存在するのかを明らかにした。2つの土壌栄養状態(特にリン)が異なる常緑樹林に各10個設置したライシメーターの土壌水を分析した結果、土壌栄養の貧弱な森林では土壌水に常に高濃度のポリフェノールが存在しており、その濃度と溶存タンパク質濃度には正の有意な相関関係が認められた。これにより、ポリフェノール-タンパク質結合体の存在が強く指示され、栄養状態の違いによりポリフェノール-タンパク質結合体の濃度は異なることが明らかとなった。後者のパターンは、地上の樹木が生産する葉の縮合タンニン濃度と関係していた。ポリフェノール-タンパク質結合体の濃度は各森林で、表層から深層にかけて減少した。培養実験から、ポリフェノール-タンパク質結合体は非常に難分解性の強い有機物であることが明らかとなった。以上から、樹木が生産するポリフェノールはタンパク質と難分解性の結合体を形成し、森林の窒素循環に強い影響を与えることが示唆された。
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Research Products
(1 results)