2006 Fiscal Year Annual Research Report
植物の被食防衛と腐食連鎖を結ぶポリフェノール化合物の生態系生態学的研究
Project/Area Number |
15370011
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
北山 兼弘 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (20324684)
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Keywords | ポリフェノール物質 / ポリフェノール-タンパク質複合 / 難分解生有機物 / 土壌水 / 窒素溶脱 / 土壌有機物 / 生態系生態学 / 腐植連鎖 |
Research Abstract |
常緑針広混交林において、森林内に優占する5種類の高木種を選び、樹冠下から表層5cmの腐植土壌を採取した。持ち帰った土壌について、土壌微生物群集の組成、土壌の物理化学特性(pH、湿度、%C、%N、 C/N比、フェノール濃度)、土壌酵素活性(リン酸分解酵素、グルコシダーゼ、フェノールオキシダーゼ)、土壌リン濃度を分析した。土壌の微生物組成については、土壌中に存在するリン脂質脂肪酸を有機溶媒によって抽出し、GCを用いてリン脂質脂肪酸のピークを検出した。そのうち、8つの微生物グループ(グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、菌類、放線菌、原生動物、内生菌根菌、'外生菌根菌)のそれぞれに特徴的なリン脂質脂肪酸を指標種として選び、樹木個体毎のリン脂質脂肪酸の相対モル比をもとに主成分分析を行い、樹木25個体を展開した。その結果、展開した樹木個体は樹種毎にクラスターを形成し、このことから土壌微生物群集の組成は樹種特異的であることが示唆された。特に、針葉樹2種と広葉樹3種の間で、土壌微生物群集の組成は大きく異なることが示され、これは生葉から抽出される総フェノール濃度の差を反映しているものと解釈できた。しかし、それぞれの微生物グループを指標するリン脂質脂肪酸のモル比と土壌から水によって抽出される総フェノール濃度の間には、全ての微生物群において有意な相関関係がみられなかった。このことから、生葉のポリフェノールは土壌表層の微生物群に影響を与え、樹種特異的な土壌微生物群集が形成されるが、土壌腐植自体は分解産物であるからその中の溶存総フェノール濃度の微生物相への影響は低下するものと解釈された。
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Research Products
(3 results)