2003 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫のキノコ体のNO―環状GMPシグナル伝達系が長期記憶の形成に果す役割の解析
Project/Area Number |
15370031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水波 誠 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教授 (30174030)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青沼 仁志 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (20333643)
松本 幸久 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 日本学術振興会特別研究員
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Keywords | コオロギ / 匂い学習 / 一酸化窒素 / 長期記憶 / cGMP / 昆虫 / タンパク合成阻害剤 |
Research Abstract |
コオロギでは1回の嗅覚学習訓練(匂いと報酬の対呈示)により学習が成立するが、その記憶は数時間しか保持されない。一方、4回の学習訓練を行うと、学習後少なくとも4日間は保持される長期記憶が成立する。4回訓練による長期記憶の形成はタンパク合成阻害剤(シクロヘキシミド)の投与により阻害される。NO合成阻害剤(L-NAME),NO除去剤(PTIO),cGMP合成阻害剤(ODQ)を頭部に投与したコオロギに4回の学習訓練を行なったところ、学習後2、3時間までの短期記憶は正常であったが、長期記憶の形成は阻害されていた。L-NAMEによる長期記憶形成阻害は、NO発生剤(SNAP, PTIO)を同時に投与すると起こらず、また、ODQによる長期記憶形成阻害は、膜透過型cGMPを同時投与すると起こらなかった。一方、NO発生剤や透過型cGMPを投与したコオロギでは、1回の学習訓練でも長期記憶が成立した。このような長期記憶の誘導効果は、PKA(cAMP依存性タンパクキナーゼ)阻害剤であるKT5720やタンパク合成阻害剤の同時投与により阻害された。この結果から、NOによりcGMPを合成する系(NO-cGMPシグナル伝達系)が、PKAおよびタンパク合成系を介して、長期記憶形成を誘導することが示唆された。 Caged NOを用いた研究のための予備実験として、コオロギを台に拘束し、脳を露出させてから4回の嗅覚学習訓練を行い、1日後に匂い嗜好性を調べたところ、このような訓練条件でも長期記憶が成立することが分かった。また、NO誘導性cGMPの免疫組織化学により、コオロギの触角葉およびキノコ体におけるNO受容ニューロンの分布の概要が明らかになった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Y.Matsumoto, S.Noji, M.Mizunami: "Time course of protein synthesis dependent phase of olfactory memory in the cricket Gryllus bimaculatus"Zoological Science. 20. 409-416 (2003)
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[Publications] H.Watanabe, Y.Kobayashi, M.Sakura, Y.Matsumoto, M.Mizunami: "Classical olfactory conditioning in the cockroach Penplaneta americana"Zoological Science. 20. 1447-1454 (2003)
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[Publications] R.Okada, M.Sakura, M.Mizunami: "Distribution of dendrites of descending neurons and its implications for the basic organization of the cockroach brain"Journal of Comparative Neurology. 458. 158-174 (2003)
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[Publications] H.Nishino他5名: "Projection neurons originating from thermo-and hygrosensory glomeruli in the antennal lobe of the cockroach"Journal of Comparative Neurology. 455. 40-55 (2003)