2004 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫のキノコ体のNO-環状GMPシグナル伝達系が長期記憶の形成に果す役割の解析
Project/Area Number |
15370031
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水波 誠 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教授 (30174030)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 幸久 東北大学, 大学院・生命化学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | コオロギ / 匂い学習 / 一酸化窒素 / 長期記憶 / cGMP / 昆虫 / cAMP / カルモジュリン |
Research Abstract |
コオロギに1回の匂い学習訓練を行うと、学習後の記憶は数時間しか保持されない。一方、4回の匂い学習訓練を行うと、学習後少なくとも4日間保持される長期記憶が成立する。前年度の研究により、この長期記憶の形成には、NO-cGMPシグナル伝達系、cAMP-PKA (cAMP依存性タンパクキナーゼ)シグナル伝達系、およびタンパク合成系が関わること、またNO-cGMP系の活性化は、cAMP-PKA系の活性化およびタンパク合成系の活性化を介して、長期記憶の誘導に至ることが示唆された。 そこで本年度は、cGMP合成からcAMP合成に至るシグナル伝達経路について調べた。CNGチャネル(環状ヌクレオチド依存性陽イオンチャネル)の阻害剤またはカルモジュリン阻害剤を投与したコオロギに4回の学習訓練を行ったところ、短期記憶は正常であったが、長期記憶の成立は阻害された。膜透過型のcGMPを投与したコオロギに1回の学習訓練を行うと長期記憶が誘導されたが、同時にCNGチャネル阻害剤やカルモジュリン阻害剤を投与すると、長期記憶は誘導されなかった。一方、膜透過型のcAMPを投与したコオロギに1回の学習訓練を行うと長期記憶が誘導されたが、同時にCNGチャネル阻害剤やカルモジュリン阻害剤を投与した場合にも、長期記憶は誘導された。 これらの結果から、CNGチャネルおよびカルシウム-カルモジュリン系が、NO-cGMP系とcAMP-PKA系の間を介在していることを示唆された。すなわち、cGMPによりCNGチャネルが活性化されてカルシウムイオンが細胞内に流入し、カルモジュリンの活性化、さらにアデニル酸シクラーゼの活性化を経てcAMPの合成に至る、というシグナル伝達経路の存在が示唆された。
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