2005 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫のキノコ体のNO-環状GMPシグナル伝達系が長期記憶の形成に果す役割の解析
Project/Area Number |
15370031
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
水波 誠 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教授 (30174030)
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Keywords | コオロギ / 匂い学習 / 一酸化窒素 / 長期記憶 / cGMP / 昆虫 / cAMP |
Research Abstract |
前年度までの研究により、コオロギの長期記憶の形成には、NO-cGMP系、cAMP-PKA(cAMP依存性タンパク・キナーゼ)系、およびタンパク合成系が関わること、またNO-cGMP系の活性化は、CNGチャネル、カルシウム・カルモジュリン系、およびcAMP-PKA系の活性化を介して、長期記憶の誘導に至ることが示唆された。 しかし最近、ミュラーにより、ミツバチのPKAは少量のcAMPの存在下ではcGMPによって活性化されうることが示唆され、これをもとに、NO-cGMP系とcAMP系は並列経路をなし、2つの経路がPKAで収斂することで相乗効果を発揮し、長期記憶の成立に至る、という説が提唱された。この説は、NO-cGMPシグナル伝達系とcAMPシグナル伝達系は直列的に配置されているとの私の説と真っ向から対立している。 そこで本年度は、コオロギにおいてcGMPがcAMP経路を介さす直接PKAに作用する経路が存在するかを明らかにするため、少量(0.05mM)のDA-cAMP(膜透過型cAMP)の存在下での1回訓練と4回訓練による長期記憶誘導効果を、1mMのDDA(cAMP合成酵素の阻害剤)下で比較した。これまでの私達の研究により、cGMPは1回訓練では発生せず、4回訓練では発生することがわかっている。そこでもしcGMPが直接PKAを活性化できるなら、4回訓練では1回訓練よりも高いレベルの長期記憶が成立すると予想される。しかし実際には、両者の間で長期記憶のレベルには有意な差は観察されなかった。この結果は、他の種々の実験結果と合わせて、匂い学習の際にはcGMPはPKAとは別のコンパートメントで発生するため、cGMPは直接PKAに作用できないことを示唆している。
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Research Products
(6 results)