Research Abstract |
本年度は星形の葉緑体を持つ種である,Asterocladon interjectumの凍結置換法を用いた葉緑体微細構造の観察を行うとともに,蛍光抗体染色によるルビスコ分子の局在の観察を行った。また,原始的な褐藻類におけるカロチノイド類の色素分析を行うため,分子系統解析により最も初期に分岐することが示されているコリストカルプス科のChoristocarpus,同じく初期に分岐するイシゲ科のIshige,ファエオタムニオン科のPhaeostrophionなどの系統株の培養を行った. 一方,褐藻類と近縁と考えられる,新規の海産多細胞黄色植物をニュージーランドより単離し,単藻培養株を確立した。この種につき,培養により生活史,光顕レベルの形態の観察を行い,またルビスコ遺伝子を用いた分子系統学的解析を行った。また,本種について,HPLCによるカロチノイドおよびクロロフィルの分子種の解析を行った.これらの解析の結果,本種はこれまでに知られている分類群としてはファエオタムニオン藻綱,褐藻綱,シゾクラディア藻綱と近縁であることが示された。このうち,ファエオタムニオン藻綱は多系統であることが示唆されているが,本種はファエオタムニオン藻綱のうちタイプを含まないクレードと最も近縁であったため,ファエオタムニオン藻綱には含まれない。したがって,その綱レベルの帰属については今後さらに解析が必要であることが明らかになった.
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