2003 Fiscal Year Annual Research Report
クライオ電子顕微鏡法とNMR分光法による筋収縮制御機構の研究
Project/Area Number |
15370069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
若林 健之 帝京大学, 理工学部, 教授 (90011717)
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Keywords | トロポニン / トロポミオシン / カルシウム制御 / 筋収縮 / アクチン / ミオシン / NMR分光 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
生体運動は分子モーターが分子レールの上を滑ることによると考えられている。その際ATP分解が伴い、細胞内カルシウム・イオン濃度が制御に関わっている。分子モーターであるミオシンが分子レールであるアクチン・フィラメント上を滑る際には、まずCa^<2+>がトロポニンに結合して細いフィラメントを活性化し、活性化された細いフィラメントにミオシン・ADP・無機リン酸(Pi)複合体が相互作用する。このCaによる「細いフィラメント」の制御の分子機構を明らかにすることを目的とした。 低Ca濃度ではトロポニンが分子構造変化しトロポニン・アームがトロポニン分子本体から突出してくることを、私たちはクライオ電子顕微鏡像を単粒子解析して初めて明らかにしたが、このトロポニン・アームの原子構造を安定同位体標識したトロポニン3者複合体(TnT2,TnC,TnI)のNMR分光法で明らかにすることを第一の目標とした。 この目標はNMR分光法によって、2次構造を決定、NOEスペクトルにより3次構造決定を行い、トロポニン・アームがトロポニンに組み込ませている状態のままで原子構造の決定に成功した。トロポニン・アームは低Ca濃度アクチンに結合して収縮阻害をもたらす重要な領域であるが,高Ca濃度でのTnT2・TnC・TnI複合体の結晶解析の結果では、電子密度が観察できておらず,領域は結晶のなかでは揺れ動き、構造決定が困難だった。 今回のNMR分光法による原子構造決定により,トロポニン・アームはこの阻害領域を含めてX線結晶解析では可視化できない部分は、逆にNMRスペクトルが得られるとの予測が裏付けられた。また高Ca濃度ではトロポニン・アームがトロポニン頭部の本体とより密接に結合することも明らかとなった。
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