2004 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の神経可塑性におけるRas-MAPK経路及びインシュリン経路の機能の解明
Project/Area Number |
15370071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯野 雄一 東京大学, 遺伝子実験施設, 助教授 (40192471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國友 博文 東京大学, 遺伝子実験施設, 助手 (20302812)
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Keywords | 連合学習 / 嗅覚順応 / 化学走性学習 / Ras / MAPキナーゼ(MAPK) / インスリン / PI-3キナーゼ / let-60,ins-1,daf-2 |
Research Abstract |
1)我々は以前にRas-MAPK経路が線虫C.エレガンスの嗅覚神経で働き、効率のよい匂い応答に必要であることを報告した(Hirotsu et al.2000)。本研究では、Ras-MAPK経路が嗅覚順応にも関わっていることを見出し、機能解析を行った。この嗅覚順応は早期嗅覚順応と名付けた現象で、この順応が感覚神経のみでなく、AIYと呼ばれる介在神経の機能に依存して起こることを見出した。AIYは嗅覚神経AWA,AWCを含む複数の感覚神経から入力を受ける介在神経である。Ras-MAPK経路のいくつかの変異体が、早期嗅覚順応に欠損を示した。さらに、細胞特異的遺伝子発現実験により、Rasをコードするlet-60遺伝子をAIY神経で発現させると嗅覚順応の欠損がもとにもどること、すなわちRasがAIY介在神経で働くことを明らかにした。匂い刺激により、嗅覚神経及び介在神経AIYでMAPキナーゼが活性化されることが抗体染色で確認された。 2)また、化学走性の連合学習のアッセイ系も構築している。線虫は通常NaClを好むが、餌の非存在下でNaClを一定時間経験すると、NaClを忌避するようになる。インスリンINS-1、インスリン受容体、およびその下流で機能することの知られているPI3キナーゼ、PDKキナーゼ、Aktキナーゼそれぞれの変異体でこの行動可塑性が失われていた。細胞特異的発現実験により、INS-1は介在神経AIAで、PI3キナーゼはNaClを受容するASE神経で働いていることがわかった。すなわち、感覚神経からシナプス入力を受けるAIA介在神経がINS-1を介して感覚神経に逆行性に働きかけることにより、行動を変化させる。ASE感覚神経は左右対称に一対存在するが、PI3キナーゼは右のASE神経でだけ働いていた。
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Research Products
(2 results)