Research Abstract |
本年度は種々の試みを行った。先ず,(1)強風に遭遇した場合不利である「草高が3mにもなる」ことに関して,地上部と地下部の関係を,形態形成と関連させつつ数理モデルによる解析を行った。生育旺盛な地上部は,側面の投影面積が大きく,草高,株元の幅,立毛角の3パラメータで決定された。倒伏の要因として,植物体に加わる「外力」は大きな投影面積に,自らの重さにより植物体に加わる「内力」は大きな自重転倒モーメントに原因があった。生育後期の茎の傾きは根茎の肥大が大きく関与し,草高を2m程度に短縮すると,倒伏の危険性を外力では投影面積の縮小により10〜20%,内力では自重転倒モーメントの減少により約50%の軽減効果がある。次に,(2)形質改善の具体化として,大量に植物組織を培養し,変異源を施用して変異体を作って選抜を行おうとした。食用カンナは過去に培養例がないので,至適培地の作成が必要である。寒天と液体のMS培地を用いて,成長点組織を用いて寒天,BA, IBAおよびNAAの濃度を検討した。その結果,液体は有効でなく,寒天は8g/Lが最適であった。BA0.5mg/L+IBA1mg/Lの場合最も外植片が成長し,低濃度BAと高濃度IBAの組み合わせが高い発根率を示した。コルヒチンによる染色体倍加は不首尾であった。最後に,(3)高い潜在生産力の基礎として,光合成と葉組織構造の関係を検討した。本種は単子葉であるが,双子葉型の柵状組織と海綿状組織を有する特徴がある。光合成速度は光強度が1500μmol/m^2/sでは飽和せず,向軸面と背軸面を照射した場合,背軸面照射が劣った。また,葉肉が厚いので, CO_2濃度が2000μL/Lまで光合成速度は飽和しなかった。気孔開度と気孔密度は背軸面の方が大きく,蒸散は主に背軸面で行われるが,充実した陽生的な柵状組織のある向軸面が高い光合成能力を有すると考えられた。
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