Research Abstract |
食用カンナは草高が3mにも達するので,台風等の強風に遭遇した場合,倒伏を招き物質生産の上で不利になる場合がある。そのために,前年度まで形態形成と関連させた数理モデル研究を行い,2m程度の草高にすれば,自重転倒モーメントが小さくなり,風(外力)にも抵抗性をもたせることが可能という結論を得た。そこで,本年度は一つの方法として,組織培養技術により草丈等に関する変異体を作出することと,カルスや多芽体形成による大量培養することを主要な目的として,主にin vitroでの実験を行い,一部圃場実験を行った。食用カンナは過去に培養例がないので,至適培地の作成が必要であり,寒天を支持媒体としたMS培地とB1培地とを用いて,成長点組織を用いて寒天,BA, IBAおよびNAAの濃度を検討した。その結果,寒天は8g/Lが最適であり,BAO.5mg/L+IBA1mg/Lの場合最も外植片が成長し,低濃度BAと高濃度IBAの組み合わせが高い発根率となった。また,発根するとその後のシュート成長が著しく促進されることがわかり,成長を開始した外植片に抗オーキシンであるTIBAを施用すると,多芽体が形成されることも判明し,食用カンナの体内オーキシンレベルの高いことが推定された。他方,コルヒチン処理により6培体細胞群が得られ,染色体倍加の起こることが確認されたが,これらは培養を継続すると死滅してしまい,変異体作成には至らなかった。圃場実験においては,210日の栽培期間で乾物生産量が約35t/haと高い値を示したが,デンプンを採取するイモ(根茎)収量は16t/haと満足すべき値ではないことが確認された。試験管内における大量増殖方法の見通しが立ったので,今後は,変異体の作出を急ぐ必要がある。そのことを通じて,食用カンナの理想型に近い草姿を有する個体が得られるものと考えられる。
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