2003 Fiscal Year Annual Research Report
侵入地と原産地個体群の比較による侵入昆虫の分布拡大におよぼす生物群集の影響
Project/Area Number |
15380039
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
安田 弘法 山形大学, 農学部, 教授 (70202364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 寛志 信州大学, 農学部, 教授 (70123768)
櫻谷 保之 近畿大学, 農学部, 教授 (80153964)
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Keywords | 生物群集 / 外来種 / 分布拡大 / 種間相互作用 / テントウムシ |
Research Abstract |
2003年度は主に、(1)日本に侵入した植食性及び捕食性テントウムシの分布拡大の実態把握及び侵入地生物群集構成種との種間相互作用が侵入種の生存に及ぼす影響と、(2)米国に侵入した2種テントウムシが米国在来2種テントウムシの生存に及ぼす影響を解明する野外調査及び室内実験を実施し、以下の結果を得た。 1)日本に侵入した植食性インゲンテントウの死亡要因と分布拡大 インゲンテントウは1997年に日本に侵入が確認されて以来、2003年の調査で長野県ではすでに12市町村に分布が拡大し、天敵としては、卵期・若齢期はナミテントウ、ヒメカメノコテントウ、クサカゲロウ科のCharyposa属の幼虫などが重要な捕食者であることが明らかになった。さらに3、4齢期にはシリボソクロバチ科とヒメコバチ科の寄生蜂がインゲンテントウに寄生しているのを確認し、特にPediobius foveolatusは2世代目の幼虫に高い寄生率を示していた。今後、これらの死亡要因がインゲンテントウの分布拡大に及ぼす影響を明らかにする必要があると考えられた。 2)日本に侵入した捕食性フタモンテントウの分布拡大と在来種との種間相互作用 2003年に、フタモンが最初に発見され、その後、継続的発生地である大阪府南港地区でフタモンと関係する在来テントウシの個体数調査を行った。その結果、ムクゲの木単位では、フタモンと優占的な在来種であるナミとは分布の重なり程度が比較的高かったが、枝単位では両種の分布はあまり重なることはなく、両者の直接的競争関係は弱いと推察された。また、発育はフタモンのほうがナミに比べ早く、こうした、発育期のズレが両種の競争回避に作用していることも考えられた。さらに、フタモンと在来テントウムシのナミまたはダンダラを同一容器内で飼育した結果、餌のアブラムシが十分な場合は、両種間での捕食はあまり起らなかったが、餌が少ない場合は種間捕食の頻度が高くなった。 3)米国に侵入した捕食性のナナホシとナミが米国の在来2種テントウムシの生存に及ぼす影響 ナミとナナでは在来テントウムシの生存に与える影響は異なり、ナミがナナより強く、外来種から受ける影響は、小型種が大型種より大きかった。このような種間相互作用の違いは、ナミがナナより攻撃的であり、ナミから攻撃されると回避成功率が低いことに起因していた。今後は幼虫間の種間相互作用だけでなく、それ以外の要因である餌変換効率や卵及び幼虫捕食が在来種の生存に及ぼす影響も含めて解析し、外来種が在来種の生存に及ぼす影響を総合的に検討する必要があると思われた。
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