2005 Fiscal Year Annual Research Report
内分泌かく乱物質の体内動態、特にステロイド代謝と硫酸化との関係解明
Project/Area Number |
15380075
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
水光 正仁 宮崎大学, 農学部, 教授 (00128357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榊原 陽一 宮崎大学, 農学部, 助教授 (90295197)
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Keywords | 硫酸化 / 硫酸転移酵素 / ビスフェノールA / 内分泌かく乱物質 / 環境ホルモン / エストロゲン作用 / 硫酸抱合 / イソフラボン |
Research Abstract |
硫酸転移酵素は、生体内の薬物代謝第II相反応の一つである硫酸化に関与するとともにステロイドホルモンなどの内因性化合物の生体内濃度調節に重要な役割を果たしている。近年、内分泌かく乱物質はヒト硫酸転移酵素により、効率よく硫酸化されることが報告された。本研究では、ヒトおよびマウスに引き続き、魚類モデルとしてゼブラフィッシュのエストロゲン硫酸転移酵素を調製し、本酵素が内因性化合物および内分泌かく乱物質であるビスフェノールA、アルキルフェノール類そして植物エストロゲン類を硫酸化するかどうかについて検討した。また、内分泌かく乱物質とエストロゲンとの競合アッセイにより、内分泌かく乱物質のエストロゲン硫酸化阻害機構を解明した。さらに、ヒト硫酸転移酵素の遺伝子多型を調製して、酵素活性の差異について検討した。 その結果、内分泌かく乱物質は、ゼブラフィッシュのエストロゲン硫酸転移酵素(SULT1 ST#2)により硫酸化され、競争的にエストロゲンの硫酸化を阻害することが明らかになった。エストロゲンの硫酸化に関わる4種類のヒト硫酸転移酵素と、そのアミノ酸置換を導入した酵素、すなわち一塩基多型由来アミノ酸バリアントを調製し、エストロゲンを基質にして硫酸化したところ、SULT1A1のバリアント*4(A146T,E181G,R213H)およびSULT1E1のバリアント*2(D22Y)は酵素活性が低下し、一方、SULT1E1のバリアント*4(P253H)は酵素活性が上昇した。ついで、イソフラボンとエストロゲンの競合アッセイを行ったところ、SULT1E1のバリアント*3においてイソフラボンの酵素阻害活性が低下した。 以上のことから、硫酸転移酵素は哺乳類、魚類を問わずエストロゲンの生体内濃度を調節することが明らかにされ、また、内分泌かく乱物質がエストロゲンの恒常性を干渉し、哺乳動物や魚類のメス化に関与することが示唆された。また、ヒト硫酸転移酵素の遺伝子多型は酵素活性が異なることから、内分泌かく乱物質に対する感受性や疾患リスクに差があることが考えられる。
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