2004 Fiscal Year Annual Research Report
血圧調節に関わるペプチドの活性発現機構の多面的解明と降圧食品設計の新指針提案
Project/Area Number |
15380094
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松井 利郎 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (20238942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 清 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (80038322)
木元 幸一 東京家政大学, 大学院・家政学研究科, 教授 (60133378)
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Keywords | 高血圧 / レニン-アンジオテンシン系 / ペプチド / 副作用 |
Research Abstract |
降圧ペプチドであるVal-Tyrの活性発現挙動の解明を通して、生体内での活性ペプチドの作用機序を明らかにすることを試みた。本年度においては1)血管平滑筋に対する生理作用の解明と2)副作用:ブラジキニンの蓄積(空咳)を伴わないペプチド構造の要件をペプチドの疎水性をもとに計算科学的に予測することを試みた。 1)降圧ペプチドの血管組織に対する生理作用 (1)ヒト正常血管平滑筋細胞(VSMC)を用いてVYの生理作用を検討した。その結果、VYは0.5%FBS添加血清SmBM培養によってVSMCの増殖を濃度依存的に抑制し、100μMの添加によって約41%の増殖抑制効果が認められた。他方、強いACE阻害活性が認められている他のペプチド(IW, IVY)を用いて同様の試験を行ったが、抗VSMC増殖作用は全く認められなかった。この結果は、ACE阻害ペプチドがVSMCの増殖を抑制する作用を有していることを初めて明示するものであった。さらに、VYは1μMアンジオテンシンII(Ang II)によって誘導されたVSMC増殖を濃度依存的に抑制し、この効果は他のACE阻害ペプチド(IPPIVY,IY,IW,VW)では全く認められず、また臨床阻害薬であるcaptoprilでも同様であった。 (2)VYは無血清培でのVSMCの生細胞数に影響を及ぼさなかったことから、本増殖抑制作用の発現は、ペプチド毒性によるものではないことが判明した。 (3)1μM AngII及び1μM AngII受容体アンタゴニスト(saralasin)存在下においてもなお、VYはさらなるVSMC増殖抑制効果を示した。このことから、VYはRAS代謝系とは異なる血圧調節系に関与していることが初めて明らかとなった。 2)副作用併発の解明 N-domain特異的擬似基質AcSDKPを用いた降圧ペプチドのN-domain阻害活性測定を実施し、71種類にわたるペプチド体を合成した結果、IY,IPP,IWなどの数種ペプチドにおいてのみIC50値として100μM以下の阻害活性が認められた。その発現性を詳細に検討した結果、N-ドメイン阻害に対する要件として、ある範囲の疎水性(10.9-12.0kJ/mol)を有することが重要であるとの新知見を提示することができた。
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Research Products
(3 results)