2005 Fiscal Year Annual Research Report
隔離分布するブナ林の繁殖能力低下要因-メタ個体群が共有する近交弱勢遺伝子の解析
Project/Area Number |
15380101
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
向井 譲 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (80283349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角張 嘉孝 静岡大学, 農学部, 教授 (60126026)
津村 義彦 森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 研究職(ゲノム解析研究室長) (20353774)
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Keywords | ブナ / 近交弱勢 / 連鎖地図 / 人工交雑 / 遺伝的構造 / マイクロサテライトマーカー / 花粉生産量 / 開花率 |
Research Abstract |
1.遺伝マーカーの開発と連鎖地図の拡充 富士山のブナ天然林内に生育する2個体を両親として人工交雑を行い、得られた78個体のF1を用いてAFLPマーカー及びSSRマーカーによる連鎖解析を実施した。その結果、母樹ゲノムについては140遺伝子座がマッピングされた12連鎖群から構成される地図距離1037cM、花粉親ゲノムについては206遺伝子座がマッピングされた13連鎖群から構成される地図距離1096cMの連鎖地図を作製した。また、両親で同時に多型を示す17遺伝子座を用いて両親の連鎖群のうち5個の連鎖群を対応させることができた。 2.ブナの開花状況調査 岐阜大学演習林のブナ天然林内で開花調査を行った。調査地内における開花率は76%であり、開花個体の多くは胸高直径(DBH)30cm以上に分布していた。また、調査地内に観察用のタワー(高さ21m)を建設し、花粉飛散量の観察、人工交雑、堅果形成過程の観察をおこなった。花粉の飛散期間は4月28日〜5月11日の約2週間であり、柱頭に付着した花粉数は33.7個であった。 3.局所個体群の遣伝的構造と自然受粉種子の解析 交雑家系の作成に使用した母樹及び花粉親が存在する富士山のブナ天然林において、(1)32個体により構成されるブナ局所個体群内の2個体から採集した堅果を対象としてマイクロサテライトDNA(SSR)マーカを用いて花粉親の同定を行った。その結果、分析した堅果の92%の花粉親が局所個体群内に存在した。また、母樹と花粉親との距離から花粉の平均飛散距離が約37mであることを明らかにした。(2)分析した堅果の5%は自家受精により生じたものであり、自然交雑下では自家不和合性が不完全あることを推察した。(3)母樹と花粉親との距離及び花粉親の個体サイズは花粉親としての貢献度に影響を及ぼすが母樹と花粉親との血縁度は花粉親としての貢献度にほとんど影響を及ぼさないことから、母樹に対する花粉供給量が局所個体群内における花粉を介した遺伝子流動に最も重要な意味を持つことを明らかにした。
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