2003 Fiscal Year Annual Research Report
希少猛禽類イヌワシとの共存を目指した森林施業法の確立
Project/Area Number |
15380112
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
由井 正敏 岩手県立大学, 総合政策学部, 教授 (20305329)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松木 吏弓 電力中央研究所, 我孫子研究所・応用生物部, 主任研究員
梨本 真 電力中央研究所, 我孫子研究所・応用生物部, 上席研究員
前田 琢 岩手県環境保健研究センター, 地球科学部, 主任研究員
関島 恒夫 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (10300964)
阿部 聖哉 電力中央研究所, 我孫子研究所・応用生物部, 主任研究員
|
Keywords | イヌワシ / 列状間伐 / 葉緑体DNA / 行動圏 / 食物網 |
Research Abstract |
(1)イヌワシの行動圏と餌項目の評価 イヌワシの調査対象ペアの行動圏を観察した結果、95%行動圏は5367haとなり、一部を除き周辺ペアと同様の広さであった。植生構成は若い人工林が59%、広葉樹二次林が19%、伐採地草地等の裸地が18%などであり、人工林の割合が高かった。本ペアの餌内容については、今年度はビデオ設置が遅れたのでデータは取れていない。そのため、岩手県内の今年度の餌捕獲データを収集し、過年度と比較した。その結果、1980年前後の未発表の501例と2003年の22例の比較で、ノウサギ38%- 50%、鳥類29%- 18%、ヘビ類27%- 14%、その他哺乳類5%- 18%となった。最近はトビ、カモメ類、シカ、ネコなども捕獲されているのが特徴である。 (2)ノウサギの餌植物の同定とバイオマス評価 列状間伐後のノウサギが餌として利用できる植物の増減の推移を調べるため,方形区による植生調査を行った。列状伐採地と非伐採地に調査区を設置し,観察された全ての植物についてシュート本数・草丈・幹長・根元直径を測定した。調査の結果70種の高等植物が記録された。これら確認された植物は標本採取し,ノウサギ糞中の植物断片からDNA解析を用いて餌植物を同定するために,葉緑体DNAのrbcL遺伝子の一部領域について塩基配列を決定し,DNAデータベースを構築した。 (3)列状間伐がイヌワシを上位捕食者とする餌食物網に与える影響 イヌワシを中心とした食物網に対する列状間伐の影響を評価するため、列状間伐区、対照区、既存の採餌区の3カ所において、イヌワシの餌種であるウサギ・ヘビ等の個体数推定とイヌワシの探餌頻度を調べた。イヌワシの主要な餌種であるウサギの個体数は、4月〜6月の時点では調査区間で明瞭な差は認められたかったものの、7月以降、列状間伐区で有意な増加が認められた。一方、もう一方の主要な餌種であるヘビ類、およびその餌であるネズミ類やカエル類の個体数では、既存の採餌区が他の調査区に比べ多かった。イヌワシの探餌頻度は、既存の採餌区で最も高かったものの、一回あたりの探餌時間で見ると列状間伐区で最も長かった。この結果は、間伐による開空部の創出がイヌワシの探餌行動を活性化した可能性を示唆するものの、間伐効果の検証には、今後も長期的にモニタリングする必要性がある。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 松木吏弓, 島野光司, 阿部聖哉, 矢竹一穂, 竹内亨, 梨本真: "ノウサギ糞からのDNA解析による餌植物同定"DNA多型. (印刷中). (2004)
-
[Publications] 松木吏弓, 矢竹一穂, 竹内亨, 阿部聖哉, 梨本真: "ノウサギ糞からのSTR多型解析による個体識別"DNA多型. 11. 42-44 (2003)
-
[Publications] 前田 琢: "森の野鳥を楽しむ101のヒント-森の王者の食糧事情 イヌワシ-"日本林業技術協会. 2/230 (2004)