Research Abstract |
昨年行った児島湖脱水ケーキの塩分溶出実験結果から,土塊からの塩分溶出には土壌の乾燥強度履歴が大きく影響し,それが,(1)乾燥が土塊表面に塩分を集積させる,(2)乾燥が土壌の間隙構造を変化させ,土壌中の塩分輸送速度を増大させる,事実に基づくことを明らかにした。このうち(2)の乾燥による土壌の間隙構造変化は,スレーキングと密接に関連すると考えられることから,本年度は,スレーキングと塩分溶出速度の関係を明らかにすることで,塩分溶出による除塩に最適な先行乾燥程度を明らかにした。試料には,児島湖脱水ケーキと諌早湾干拓地下層土を用いた。いずれの試料についても,スレーキングが最大になる乾燥段階含水比のとき,塩分溶出が最大になることが見いだされた。溶出した塩分量を土塊表面集積量と,土塊内部からの拡散移動溶出分に分離したところ,乾燥程度が低下し,スレーキングが発生する乾燥含水比になると,土塊内部から移動塩分溶出量が増大することが明らかになった。 塩分集積土からの除塩リーチングにおける石膏添加の効果を,中国内蒙古河套灌区の沖積土(レス)を対象に,カラム実験で検討した。純水によるリーチングでは,通水後に透水係数が著しく減少し,リーチング能率が低下するのに対し,石膏の添加はリーチング中の透水係数を大きな値で維持することから,リーチング能率の向上に大きく寄与することが明らかになった。また,石膏添加したリーチング水では,浸出液の溶質組成においてNaイオンの割合が増大することが分かった。これは,灌漑水に添加したCaが土壌に選択的に吸着されることで,Naが積極的に追い出されたものと考えられ,石膏添加によりNa排出(除塩)効率が向上することが明らかになった。以上2つの機構によって石膏添加が対象土のリーチング効率とリーチング能率のいずれにも有効であることが確かめられた。 また,節水的塩害地改良法としての,表層排土法,石膏添加の現地実証試験を実施するとともに,地表面の起伏が塩害地の水分・塩分移動に与える影響を検討した。
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