2003 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜の水透過性及び細胞壁の表面性状と農産物の品質低下メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
15380170
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大下 誠一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00115693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川越 義則 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (80234053)
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Keywords | 細胞膜水透過係数 / 水分損失 / アクアポリン / ホウレンソウ / プロトン緩和時間 / 水交換時間 |
Research Abstract |
葉菜類の品質低下の要因の一つである水分損失は、細胞膜や液胞膜などの生体膜の機能低下が深く関係している。このため、収穫後のホウレンソウ細胞膜の水透過性を表す細胞膜の水透過係数P_d、水透過に寄与する膜タンパクであるアクアポリンの収穫後の経時変化について検討した。 水透過係数P_dについては、NMR法で測定した。これは、NMRプロトン緩和時間測定において、Mn^<2+>などの緩和剤を添加すると、細胞内水と細胞外水の区別が緩和時間の違いにより可能となることを利用した方法である。これにより、水交換時間λ_aおよび膜にコントロールされた拡散プロセスであり、膜透過性を反映した水透過係数P_dを求めた。 試料は築地市場の業者から購入したホウレンソウ(購入日前日に収穫、購入日により品種や産地が異なる)を用いた。実験には1日貯蔵区と6日貯蔵区を設け、貯蔵温度は2℃とした。ホウレンソウの葉の葉脈を避けた葉肉部分からプロトプラストを作製し、平均密度を1×10^7/mlに調整した。なお、プロトプラスト作製の際に採取した葉は20枚程度である。測定には、Mn^<2+>(MnCl_2)無添加のサンプルとMn^<2+>添加のサンプルを用意した。このサンプルについてT_1をSaturation Recovery法により25℃で測定した。この結果、1日貯蔵したホウレンソウの水交換時間は74.3ms及び68.3ms、水透過係数は4.9x10^<-5>ms^<-1>及び5.3x10^<-5>ms^<-1>であったのに対し、6日貯蔵したものは、水交換時間が56.3ms及び54.4ms、水透過係数が6.4x10^<-5>ms^<-1>及び6.7x10^<-5>ms^<-1>となり、細胞膜の水透過性が貯蔵により増大したことが示された。 一方、水の透過孔を形成し、細胞膜の水透過に寄与するチャネルタンパク質の一種であるアクアポリンの発現量を評価した。ホウレンソウ葉肉細胞の細胞膜に分布するアクアポリンPM28AをコードするmRNAの発現量を測定したところ、収穫後に経時的に減少する傾向がみられた。アクアポリンは多数存在するのでPM28Aのみの挙動ですべてを推測することは出来ないが、これは、収穫後に生じる水ストレスに対応した細胞膜の水透過抑制を意味する応答であると考えられる。
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Research Products
(1 results)