2004 Fiscal Year Annual Research Report
レトロウイルス誘発性グリオーマの発がん機構解明とグリオーマモデルの作出
Project/Area Number |
15380207
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
落合 謙爾 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教授 (80214162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 和彦 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教授 (90250498)
小野 悦郎 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (00160903)
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Keywords | トリ / グリオーマ / 中枢神経系腫瘍 / 発癌機構 / レトロウイルス / トリ白血病ウイルス / トランスジェニックマウス |
Research Abstract |
「トリのグリオーマso-called fowl glioma」はその原因と病態が不明であった疾患である。申請者は本疾患の国内初発例を発見し,本疾患がA型トリ白血病ウイルス(ALV-A)感染症であることを明らかにした。本研究課題の目的はトリのグリオーマ原因ウイルスの神経病原性とこれに関わるウイルスゲノムenvとLTRの機能を解明することである。今年度は以下の成果が得られた。1)ニトロソ化合物N-methyl-N-nitrosoureaは代表的な発癌物質で,ラットに投与すると発癌に関与する遺伝子の変異や増幅を誘発し高頻度にグリオーマを発生させる。しかし,鶏では本剤の影響が不明であったため,本ウイルス感染鶏に本剤を投与しグリオーマ発生に与える影響を検索した。その結果,腫瘍発生に本剤の影響はみられなかったが,本ウイルスの新たな病原性,すなわち本ウイルスは鶏胚に感染すると小脳の形態異常を誘発することが判明した。これら小脳は顆粒細胞の広範な脱落,外顆粒層の遺残およびプルキンエ細胞の配列異常からなっていた。組織像に加えて免疫染色,TUNEL法および電顕検索によって小脳顆粒細胞がアポトーシスに陥っていることがわかった。以上から,本ウイルスは小脳形成期の顆粒細胞に感染するとアポトーシスを誘発し,顆粒細胞の移動,Bergmann線維およびプルキンエ細胞層の形成を障害して小脳異形成を招来することが示唆された。2)本ウイルスの細胞指向性は既知のALV-Aと差がない。したがって,本ウイルスにより誘発されるグリオーマはプロウイルスが種々の宿主細胞のDNAに組み込まれた後、特定の細胞でのみLTRが作用することが推察される。そこで,本ウイルスのLTRを遺伝子導入したトランスジェニックマウスを作製した。これまでに13系統のファウンダーマウスが得られた。
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Research Products
(1 results)