2005 Fiscal Year Annual Research Report
老化、酸化ストレスで誘発される現代的疾患の分子的病因解明と分子標的創薬
Project/Area Number |
15390029
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中山 仁 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (70088863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國安 明彦 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助教授 (90241348)
石塚 忠男 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助教授 (60176203)
川原 浩一 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助手 (10347015)
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Keywords | スカベンジャー受容体 / CD36 / 脂肪細胞 / 肥満 / ミクログリア / アルツハイマー病 / Aβクリアランス |
Research Abstract |
老化や酸化ストレスが引き金となる現代的疾患の中から、本研究では糖尿病、肥満、動脈硬化などの生活習慣病、および代表的神経変性疾患であるアルツハイマー病(AD)について、(1)病因と密接に関わる分子機構の解明、(2)その分子メカニズム上に作用する有効な物質の開発、すなわち分子標的創薬をめざすことを目標とした。最終の本年度得られた成果を、以下に記す。 (1)酸化LDL刺激下の脂肪細胞のアディポサイトカイン放出制御:動脈硬化のモデル系として、酸化LDL負荷した時の脂肪細胞から放出される数種のアディポサイトカイン量の変化を調べた結果、いずれも病態を増悪させる方向への変化であることがわかった。中でも産生・分泌の増大が著明であったレジスチンは、転写ではなく、翻訳レベルが亢進する制御機構であり、3'-UTR領域が重要であった。脂肪細胞にもマクロファージが侵入できるとの最近の注目すべき知見を考慮すると、肥満と動脈硬化との連関には、我々が見出した酸化LDLによる脂肪細胞のアディポサイトカイン放出制御が重要な役割を果すことが明らかになった。 (2)ミクログリアによる新規なAβクリアランス機構の解析:ある種のサイトカインで刺激した2型ミクログリアには選択的にオリゴマー状Aβのクリアランス能が誘導され、それにはスカベンジャー受容体とプロテアーゼが関与することを既に明らかにしたが、本年度はADモデル動物の一つ、APP23マウスを用いてin vivoでの検証を行った。その結果、サイトカインの脳内微量注入によって記憶学習能(モリス水迷路試験)の改善が認められたAPP23マウスでは、Aβの脳内蓄積の減少と相関していることがわかった。また、ある種の薬物にはこのAβクリアランス能を誘導できることも判明した。この成果は、新規メカニズムに基づくAD治療薬開発の可能性を強く示唆するものであり、今後これを推進したい。
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