2005 Fiscal Year Annual Research Report
心筋細胞死を遅延させるメカニズムのバイオイメージング解析
Project/Area Number |
15390061
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
高橋 英嗣 山形大学, 医学部, 助教授 (30206792)
|
Keywords | 生理学 / 酸素 / バイオイメージング / 低酸素 / 心筋細胞 / ミトコンドリア / クレアチンリン酸 / クレアチンリン酸シャトル |
Research Abstract |
本年度は、平成15〜16年度の研究において新規に製作した、分光・蛍光イメージングが同時に可能な顕微鏡システムを用い、低酸素により誘導される単離心筋細胞の細胞死と細胞内ATPレベルの関係を追求した。細胞内ATPの相対的変化は、Mag-fura-2を用いた細胞内遊離Mg^<2+>の蛍光イメージングにより、また、ミトコンドリアへの酸素供給はミオグロビンの分光イメージングにより同時的に可能であった。両者を細胞の形態観察とあわせて行う事で、細胞内酸素濃度の低下がATP枯渇をもたらし、それが最終的に細胞死をもたらす様子を経時的にイメージングできた。特に、低濃度の脱共役剤を用いミトコンドリア呼吸を増加させた細胞では、細胞内部に顕著な酸素濃度の勾配(細胞中心部で濃度低下)が明瞭にイメージングされた。細胞内ATP拡散速度は酸素のそれの約1/10であるから、細胞内酸素濃度勾配が存在すれば、同様なATP濃度勾配も形成されると思われたが、期待された細胞内ATP濃度勾配は見られなかった。一方、心筋細胞のクレアチンキナーゼ(CK)を0.5mM iodoacetamideにより阻害したところ、上述の酸素濃度勾配に対応するATP濃度の細胞内勾配が出現するとともに、低酸素下での細胞の生存時間が顕著に短縮した。これらは、CKにより触媒されるクレアチンリン酸(PCr)からの酸素非依存性ATP供給が、細胞内酸素濃度勾配により生じたミトコンドリアの酸素依存性ATP産生の細胞内勾配を補償し、細胞内エネルギーを一様に維持する事で、細胞死を遅延させたものと考えた。すなわち、CKによるPCrからのエネルギー供給は、心筋細胞において、これまで考えられてきたtemporal bufferであるのみならず、細胞内部のエネルギー移動を担うspatial bufferとなり得ると結論した。
|
Research Products
(4 results)