2003 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞がんの悪性化ならびに転移の分子機構の解析と、診断・治療への応用
Project/Area Number |
15390118
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
坂元 亨宇 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40221270)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 理恵 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00365230)
杜 ぶん林 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90348798)
橋口 明典 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50276218)
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Keywords | 多段階発癌 / 腺腫様過形成 / 早期肝細胞癌 / 遺伝子発現解析 / HSP70 / 肝内転移 / Akt |
Research Abstract |
肝炎ウイルスによる慢性肝障害を背景に生じる肝細胞癌において、前癌病変に相当する腺腫様過形成から上皮内癌ないし微小浸潤癌に相当する早期肝細胞癌、更に進行肝細胞癌へと進展することが明らかになってきた。早期肝細胞癌の多くは異型度が低く、浸潤・破壊性発育の所見に乏しい癌であるために、その病理診断、前癌病変である腺腫様過形成との鑑別が問題となり、細胞増殖活性や様々な分子、遺伝子の変化などが検討されてきているが、実用的なものはない。そこで本年度は、結節内結節像を示す肝細胞癌症例の非腫瘍部、早期肝細胞癌部、進行肝細胞癌部のmRNAレベルで発現の比較を行い、遺伝子発現(hierarchical clustering algorithm)によりそれらが分けられることを示し、多段階発癌過程においてそれぞれの過程が分子レベルで明瞭に異なることを示した。またHSP70が、RNA、蛋白レベルで非腫瘍部に比較し早期肝細胞癌部、進行肝細胞癌部で多段階的に過剰発現し、肝細胞癌の多段階発癌に関与していることを示した。更に、前癌病変との鑑別が問題となる早期肝細胞癌に有効なマーカーであることも多症例の免疫組織学的解析から立証した。HSP70は分子シャペロンとして、細胞がさまざまなストレスにさらされた時に生じる変性蛋白質に結合し、その沈澱を防ぐ機能を有する。早期肝細胞癌では、血流の低下によるhypoxiaの環境下などで、多くのストレスにさらされHSP70の発現が上昇していることが推察される。 また、同所性移植モデルの検討から、Aktを介した足場非依存性増殖・生存能の獲得が肝細胞がんの肝内転移性に深く関わっており、それを標的として転移を抑制できる事を示したが、本年度はその臨床的意義を検討した。リン酸化Aktを免疫組織学的に組織標本上で検出することにより、早期多発再発の予測が可能であることを示した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Chuma M, Sakamoto M, Yamazaki K, Ohta T, Ohki M, Asaka M, Hirohashi S.: "Expression profiling in multistage hepatocarcinogenesis : identification of HSP70 as a molecular marker of early hepatocellular carcinoma."Hepatology. 37. 198-207 (2003)
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[Publications] Yamamoto Y, Sakamoto M, Fujii G, Tsuiji H, Kanetaka K, Asaka M, Hirohashi S.: "Overexpression of orphan G protein-coupled receptor, Gpr49, in human hepatocellular carcinomas with β-catenin mutations."Hepatology. 37. 528-533 (2003)
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[Publications] Kanetaka K, Sakamoto M, Yamamoto Y, Takamura M, Kanematsu T, Hirohashi S.: "Possible involvement of tetraspanin CO-029 in hematogenous intrahepatic metastasis of liver cancer cells."J.Gastroenterol.Hepatol.. 18. 1309-1314 (2003)