2004 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス性脳疾患の克服:持続感染を生みだす脳内機構の解明
Project/Area Number |
15390148
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
朝長 啓造 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (10301920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生田 和良 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (60127181)
小野 悦郎 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (00160903)
辻 祥太郎 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (30285192)
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Keywords | ボルナ病ウイルス / 中枢神経系 / 持続感染 / RAGE / 脳内免疫 |
Research Abstract |
ウイルス性脳疾患の発症には脳神経細胞内でのウイルスの持続感染が深く関わっていると考えられている。これまでの研究により、持続感染の成立には、ウイルス蛋白質の発現や転写レベルの調節、そしてウイルス抗原の変異が重要であることがわかっている。しかし、それらウイルス側の変化に関わる脳内での宿主因子や免疫活動の変化は明らかになっていない。本研究では、ボルナ病ウイルス(BDV)を利用して、ウイルスの持続感染成立を決定する脳内機構の詳細な働きと発生のメカニズムを解明することを目的としている。 本年度は、ラットにおけるBDV持続感染モデルを用いて、脳内で炎症増幅因子として働いている糖化最終産物受容体(RAGE)の発現レベルとその変化に伴う脳内免疫応答について解析した。BDV感染ラットでは、IL-1やTNF-alphaなどサイトカインの発現上昇にもかかわらず、RAGEの発現は、持続感染の成立に伴い顕著に低下することが明らかとなった。一方、RAGEのリガンドであるHMGB1やS100bなどの脳内発現は上昇していることから、BDV持続感染脳内ではRAGEの発現を能動的に抑制する機序が存在すると考えられた。そこで、持続感染脳内におけるRAGEの発現低下が脳炎の誘導や増幅にどのように関与するかを明らかにするために、BDV持続感染ラットを用いて実験的自己免疫性脳炎の誘導をおこなった。その結果、RAGEの発現低下が見られた持続感染脳では、自己抗原MBPに対する免疫応答の低下が認められ、脳炎の軽減が観察された。また、LPSによる刺激に対しても、BDV持続感染ラット脳では、RAGEの発現上昇が認められず、持続感染脳では、RAGEの発現が恒常的に抑制されている可能性が示された。本年度の結果より、ウイルス感染は、脳内でのRAGE発現を恒常的に低下させることにより、脳炎反応の誘導あるいは増幅を軽減させ、持続感染の成立を促進している可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)