2005 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス性脳疾患の克服:持続感染を生みだす脳内機構の解明
Project/Area Number |
15390148
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
朝長 啓造 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (10301920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生田 和良 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (60127181)
小野 悦郎 鳥取大学, 附属鳥由来人獣共通感染症疫学センター, 教授 (00160903)
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Keywords | ボルナ病ウイルス / 中枢神経系 / 持続感染 / RAGE / 脳内免疫 |
Research Abstract |
ウイルス性脳疾患の発症には脳神経細胞でのウイルスの持続感染が深く関わっている。これまでに、持続感染の成立にはウイルス蛋白質の発現や転写レベルの調節とともに、ウイルス抗原の変異が重要であることが報告されている。しかし、それらウイルス側の変化に関与する宿主因子や脳内免疫の活動は明らかになっていない。本研究は、神経病原性のボルナ病ウイルス(BDV)の感染をモデルとして、中枢神経系におけるウイルスの持続感染成立に関わる脳内メカニズムを解明することを目的としている。 本研究の成果についてその概要を以下に記載する。私たちはBDVの持続感染成立に関わる脳内因子ならびに脳内免疫の活動を総合的に解析した。そして、BDVが持続感染したラット脳内では糖化最終産物受容体(RAGE)の発現が顕著に低下することを明らかにした。RAGEは免疫グロブリンスーパーファミリーに属するパターン認識受容体であり、HMGB1やS100b、そしてAmyloid-betaなど多様なリガンドを持っている。その活性化は自然免疫活動の長期化をはじめ、炎症反応の増幅にも関与すると考えられている。BDV感染ラット脳では、LPSの接種によっても、RAGEの発現上昇は認められずRAGE発現が恒常的に抑制されていることが示された。RAGEの抑制が認められた脳では、ミエリン蛋白質の接種によっても実験的自己免疫脳炎は誘導されず、組換えウイルス抗原接種による脳炎も抑えられることが明らかとなった。これらの結果より、BDVは脳内でのRAGEの発現とその活性化を抑制して、細胞浸潤を伴う過剰な脳炎反応を制御することで、宿主免疫の攻撃から逃れていると考えられた。同時に、RAGEの抑制がBDVの持続感染成立に重要であることも示唆された。本研究により、中枢神経系に感染するウイルスの免疫回避機構と持続感染のメカニズムについて新しい知見が得られた。本成果は、脳内でのウイルス制御とウイルス性脳炎の抑制にも応用できる可能性がある。
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Research Products
(6 results)