2005 Fiscal Year Annual Research Report
麻疹の伝播と流行発生機序の解析-ワクチン抗体が誘発する不顕性感染と新型流行株
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15390211
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 正恵 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (10201328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥野 良信 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 総括研究員 (30112064)
宮川 広実 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 主任研究員 (10346207)
堀田 博 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40116249)
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Keywords | 麻疹ウイルス / ワクチン / 遺伝子解析 / H遺伝子 |
Research Abstract |
(1)臨床分離株の遺伝子解析 日本国内で流行している麻疹ウイルスのうち、D5型のH遺伝子には、1980年代後半からの約15年間に、12の塩基置換の蓄積があり、このうち3カ所でアミノ酸の変異を伴っていた。D3型では、30カ所の塩基置換と13アミノ酸の変異が認められ、遺伝子型によって置換速度に違いがあった。近年国内に侵入したH1型では、2年間に2カ所のアミノ酸変異を伴う塩基置換があり、麻疹ウイルスも進化していることが明らかとなった。集団発生2事例および兄弟姉妹間感染の4例では、H遺伝子には全く変異は検出されなかった。一方、同一医療機関において、6ヶ月にわたり継続したD5型の流行では、33分離株中3株にアミノ酸の変異が見出されたが、この変異がそれ以降の分離株に定着することはなかった。ワクチン接種済で野生麻疹ウイルスに罹患した患者から分離されたウイルスのH遺伝子は、ワクチン未接種者からのものに比べて特に変異が多いという事実は確認できなかった。ワクチンによる抗体がウイルスの変異進化ならびに以降の流行株の出現に関与している可能性は低いものと考えられるが、今後、NあるいはPなどのウイルス粒子内部蛋白遺伝子についても解析を進め、H遺伝子の変異速度と比較する予定である。 (2)ヒト体内で増殖する麻疹ウイルスの解析 一人の感染者から分離したH1型の麻疹ウイルスをプラック分離して単離したクローンには、昨年度報告したP、MおよびFの他にH遺伝子にも変異が認められた。(1)で用いたウイルスの遺伝子配列は、これらの混合物の解析結果によるものであり、実際にヒトの中で増殖しているウイルスを反映しているかは不明である。今後、ウイルス分離に用いた咽頭拭い液あるいはリンパ球から直接RT-PCRで遺伝子を増幅して、実際にヒトの体内で増殖しているウイルスの遺伝子を確定し、ワクチン抗体の圧力による変異の有無を確認する。
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Research Products
(7 results)