2006 Fiscal Year Annual Research Report
麻疹の伝播と流行発生機序の解析-ワクチン抗体が誘発する不顕性感染と新型流行株
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15390211
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 正恵 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (10201328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥野 良信 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 総括研究員 (30112064)
宮川 広実 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 主任研究員 (10346207)
堀田 博 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40116249)
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Keywords | 麻疹ウイルス / ワクチン / 遺伝子解析 / H遺伝子 / N遺伝子 / 多様性 |
Research Abstract |
(1)臨床分離株の遺伝子解析 日本国内で分離された麻疹ウイルスのH遺伝子のORF領域について、分子系統樹を作成するとともに、非同義置換率(dn)と同義置換率(ds)の比を求め、自然選択が働いているか、N遺伝子のORF領域で得られた結果と比較を行なった。D3型では2002年までにGuam.USA/94株に対し、HおよびN遺伝子ともに負の選択が働き、Kobe477/02株では、dn/dsはH遺伝子で0.123(P=0.0004)、N遺伝子では非同義置換は認められなかった。D5型においても、2003年までにT4.JPN/89株に対し、HおよびN遺伝子ともに負の選択が働き、Osaka0616/03株では、dn/dsはH遺伝子で0.186(P=0.0002)、N遺伝子では0.034(P=0.0000)であった。一方、H1型において、N遺伝子は2004年までにChina93-2株に対し、N遺伝子は負の選択が認められたが、H遺伝子では、Kobe270/04株でdn/ds=0.469(P=0.114)、Osak1004/02でdn/ds=0.351(P=0.053)と正の選択が働いていた。変異とワクチン接種の有無に関連はなく、その要因は明らかではないが、抗体の圧力あるいは機能変化などについて解析する必要がある。 (2)ヒト体内で増殖する麻疹ウイルスの多様性 一人の感染者から分離した麻疹ウイルスをブラック分離して単離したクローンには、細胞融合能に明らかに差があり、H、FおよびM遺伝子の解析から、これらの遺伝子に多様性が認められた。それぞれの変異を導入したウイルスを作製したところ、中でもM遺伝子の変異が重要であった。M遺伝子は、麻疹ウイルス由来のSSPEウイルスで大きな変異が認められるなど、麻疹ウイルスの病原性に直接関与する可能性が考えられる。感染者体内で実際にどのようなウイルスが直接の病原因子となっているか、今後明らかにすべき課題である。
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Research Products
(7 results)