Research Abstract |
1.前年度から引き続き,肝細胞癌(McA-RH7777)移植ラットの肝癌組織において,胆汁酸合成が低下している原因を検討した。腫瘍組織では対照肝に比べて胆汁酸濃度は低下し,核内レセプターFXR/SHP系の発現も低下していた。またオキシステロール濃度は増加し,核内レセプターLXRαの活性は亢進していると考えられた。すなわち,通常の胆汁酸合成調節系は胆汁酸合成促進の方向に作用しているにも係わらず,胆汁酸合成酵素系の発現はそれに反応せず,著明に抑制されていた。胆汁酸合成酵素の発現を肝臓で特異的に発現させることに関与している核内レセプターHNF4αとHNF6の発現を肝細胞癌で測定したが,いずれも正常に発現していた。これまでのところ,胆汁酸合成系低下の原因として,肝細胞癌で著明に発現が亢進しているSREBP1やFTFなどの転写因子による抑制の可能性が考えられ,それを証明するための実験をさらに継続させている。 2.血中および組織中のデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)関連ステロイド,コレステロール合成中間産物,胆汁酸合成中間産物およびオキシステロールをLC-MS/MSを用いて高感定量する新しい方法を開発した。本法は上記ステロイドの水酸基をピコリン酸で誘導体化する方法であり,それによって,非親水性ステロールのエレクトロスプレーイオン化(ESI)法によるイオン化効率を著明に上昇させ,fgレベルの定量を可能にした。さらに,コレステロール合成系律速酵素の活性を,従来のラジオアイソトープを使わずに,LC-MS/MSで測定する方法を開発した。この方法によって,ラジオアイソトープより高感度に,amolレベルのメバロン酸定量が可能になった。
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