Research Abstract |
原発性胆汁性肝硬変(PBC)の病態形成の中心と考えられる免疫応答機序を解明し,診断・治療法の確立を目的として研究を行った.PBCの胆管上皮細胞障害に関する標的抗原の全貌は未だ明らかではないが,胆管細胞に発現する自己抗原に対する自己免疫機序が想定されている.一方,胆管は解剖学的に腸管内微生物に暴露されやすい部位にあることから,胆管細胞には,炎症,自然免疫,獲得免疫などに関連して多様な免疫制御機構が発達してきた可能性がある.そこで本年度は,PBCにおけるToll-like Receptorの関与を検討した.TLR-4はPBC肝組織に発現し,PBCの進行とともに肝細胞の細胞質・膜発現がしていたが(Wang AP et al.;J Autoimminity),核内移行は少数例にしかみられなかった.Bezafibrate添加群でPPARαの発現は亢進し,細胞増殖効果,catalase発現亢進が観察された.また,ヒト胆管培養細胞(HIBEC)を用いて,主にin vitroでTLRの発現,リガント刺激によるシグナル伝達経路,サイトカイン・ケモカインの分泌機構について解析をすすめた.HIBECはLPSなどの細菌成分の刺激によりTLR4-NF-kBと-MAPK経路を介して,IL-6,IL-8,MCP-1を分泌すること(Yokoyama et al.,Int Liver),ウイルスdsRNAの刺激によりTLR3-TRIF-IRF3経路とRIG-1-MAVS-IRF3経路を介してIFN-βを産生することが判明した.一方,肝臓生検組織凍結バンクの標本を用いて,PBCの初期病変では,病変局所のTLR-3-type1 IFN系が活性化していること(Takii Y et al.,Lab.Invest)が判明し,自己免疫性胆管炎発症におけるTLR3の役割が示唆された.さらにPBCにおける小葉間胆管細胞では,gp210抗原の発現が増加していることをみいだした.PBCにおけるTRL,PPARα発現に関する一部を明らかにすることができたが,今後進行した、PBC症例の治療薬としてフィブレート系の薬剤をはじめ安定的に蓄積したPPARαを効率的に活性化する分子・製剤の開発が期待される.また,抗gp210抗体をマーカーとした患者管理とともに,gp210を分子標的とした治療法の開発が望まれる.
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