Research Abstract |
Dahl食塩感受性ラットにおけるアデノシン受容体拮抗薬,レニン・アンジオテンシン変換酵素阻害薬とループ利尿薬併用による腎保護作用 目的:アデノシン(Ado)A1受容体は腎血管抵抗の増加と腎血流量の減少に働くことが報告されている。今回はDahl食塩感受性(Dahl S)ラットを用いて,Ado A1受容体拮抗薬FK838(FK,1mg/kg/day),アンジオテンシン変換酵素阻害薬enalapril(ENA,2mg/kg/day)と利尿薬furosemide(Fur,10mg/kg/day)の単独および併用療法を行い,その腎保護作用を比較検討した。 方法:6週齢の雄性Dahl Sラットを以下の6群,A)正塩食(0.3%Na)群,B)8%食塩食群,C)8%食塩食+FK+ENA群,D)8%食塩食+ENA+Fur群,E)8%食塩食+FK+ENA+Fur群に分け,12週間にわたって比較検討した。収縮期血圧(SBP),血清クレアチニン(Scr)の他に糸球体障害の指標として糸球体硬化指数(IGS),マクロファージの糸球体浸潤(ED-1)および糸球体メサンギウムのα-SMA (smooth muscle actin)発現,さらに,糸球体上皮細胞の形質転換を評価するためにWT-1発現を免疫組織学的に検討した。 成績:B群のSBP,ScrはA群に比較して有意に高値を示した。一方B,C,D,E群のSBPに差異を認めなかった。C,D,E群のScrはB群に比較して有意に低値を示した。また,B群のIGS,ED-1,α-SMA発現はA群に比較して有意に高値を示し,WT-1発現は有意に低値を示した。B群に比較してE群のIGSおよびC,D,E群のED-1,α-SMA発現は有意に低値を示した。特に,E群のWT-1発現はA群以外の全ての群に比較して有意に高値を示し,A群と同レベルであった。実験最終週の生存率はB,C,D,E,A群の順に27,71,80,88,100%であった。 結論:8%高食塩食負荷Dahl SラットにおいてFK、ENAとFurの併用は糸球体内マクロファージ浸潤抑制,メサンギウム細胞形質転換抑制および糸球体上皮細胞形質転換抑制作用作用を有し、生存率を改善することが示唆された。
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