2004 Fiscal Year Annual Research Report
虚血耐性におけるHIF-1αの機能解明とその制御によるスーパー肝細胞の開発
Project/Area Number |
15390384
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
島津 元秀 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70124948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
合田 亘人 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00245549)
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Keywords | 低酸素 / HIF-1 / ノックアウト動物 / 虚血 / 肝再生 / サイクリン / 細胞周期 |
Research Abstract |
本研究課題は将来の臨床応用に繋がるより高い虚血耐性能を有する肝細胞の開発を目指し、低酸素環境への肝実質細胞の機能的適応変化に関する分子メカニズムを解明することを目的としている。この目的遂行のために本年度も継続して生体の低酸素応答システムの中心に位置する転写制御因子hypoxia inducible factor-1(HIF-1)の肝臓特異的な機能欠損マウスを用いて肝再生機構における役割について解析を行った。まず、昨年度認められた正常肝再生過程におけるHIF-1の転写活性化が、HIF-1α遺伝子の転写活性化に基づいたHIF-1α蛋白発現亢進によることを定量的RT-PCR法にて明らかにした。また、再生肝臓内において低酸素化が誘導されないことを免疫組織学的に明らかにした今回の結果とあわせ、肝再生過程のHIF-1依存性転写活性化には肝臓内酸素環境変化に起因したHIF-1αタンパク質安定化依存性活性化メカニズムと異なった新しい転写レベルでの制御機構の関与を強く示唆していると結論づけた。一方、昨年度明らかにしたHIF-1欠損マウスにおける早期肝再生過程遅延現象について詳細な解析を行い、この再生肝重量回復遅延が肝実質細胞の部分的な細胞増殖応答抑制によることをBrdUによる免疫組織染色により明らかにした。また、この細胞増殖応答抑制はHIF-1活性欠損により細胞周期特にG1期からS期への移行を司るサイクリンD1,E,Aの発現が部分的に減少し、その結果サイクリン依存性キナーゼ(CDK)の活性が抑制されたためであることをwestern blotおよびkinase assayにより証明した。これまでにG1/S期移行に関わるサイクリン蛋白の発現調節にHIF-1が関与しているということは報告されておらず、また本研究においてこれらサイクリンのプロモーター解析を行ったところ直接的なHIF-1依存性メカニズムを示唆する所見が得られていないことを考慮すれば、HIF-1が間接的にあるいはCIP,KIPなどのCDK抑制因子の発現を介している可能性を示していると考えられる。
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