2004 Fiscal Year Annual Research Report
膵発生・分化再生機構解析を軸とした膵癌治療の基盤的研究
Project/Area Number |
15390395
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
土井 隆一郎 京都大学, 医学研究科, 講師 (20301236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 康二 京都大学, 医学研究科, 助手 (70335280)
川口 義弥 京都大学, 医学研究科, 助手 (60359792)
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Keywords | Pdx-1 / 膵癌 / 膵発生 / 分化制御 |
Research Abstract |
膵分化と膵癌進展におけるPDX-1の機能に焦点をあてた研究を行った.PDX-1は膵発生とβ細胞の機能維持に必要な転写因子であり,肝臓で強制発現させ膵臓特にβ細胞が分化誘導できれば有用である.一方膵癌におけるPDX-1の発現・機能は未だ不明である.今回,PDX-1をマウスの肝臓において強制発現させインスリン産生細胞誘導の検討を行った.またヒト膵癌症例と膵癌細胞株でのPDX-1の発現を検討し,膵癌細胞株でPDX-1を強制発現させ,その効果を検討した. PDX-1によるインスリン産生細胞の分化誘導についての研究では,Ad-pdx-1投与により肝臓の一部でインスリン陽性となる細胞を認めた.高血糖モデルに、Ad-pdx-1を投与し,血糖の上昇は回避された.さらに部分肝切除術を加えた高血糖モデルにAd-pdx-1を投与したところ,血糖の上昇は回避されインスリン陽性細胞を肝臓のより広範囲に認めた.以上の結果から,肝臓でのPDX-1の強制発現により,インスリン産生細胞が誘導され高血糖を回避することが示された.さらに肝切除によりインスリン陽性細胞の増加が認められた. PDX-1の膵癌進展における機能解析についての研究では,抗PDX-1抗体にて膵管癌切除症例35例に免疫組織化学染色を施行したところ43%でPDX-1の発現を認めた.また臨床病理学的因子のうちリンパ節転移と組織学的分化度がPDX-1との発現に有意な相関を認めた.PDX-1陽性群では陰性群より有意に生存期間の短縮を認めた.多変量解析によりPDX-1は独立した予後規定因子であった.膵癌細胞株7株でのPDX-1の発現をWestern blot法で検討したがPDX-1の発現を認めなかった.そこでPanc-1にAd-pdx-1を導入すると細胞増殖能,形態学的には変化を認めなかったが,遊走能は有意に亢進した.膵癌症例の検討および膵癌細胞株への強制発現実験からPDX-1は膵癌の進展に重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
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Research Products
(6 results)