2005 Fiscal Year Annual Research Report
脳虚血時におけるグルタミン酸トランスポーターの動態解析とその治療的応用
Project/Area Number |
15390436
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三谷 章 京都大学, 医学部, 教授 (50200043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 嶬 京都大学, 医学部, 教授 (60034188)
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Keywords | グルタミン酸 / トランスポーター / 脳虚血 / 海馬 / マイクロダイアリシス |
Research Abstract |
虚血性ニューロン死発生の最初期過程においては、脳虚血中に濃度上昇する細胞外グルタミン酸がニューロン死発生の因子として重要な役割を担っていると考えられている。通常、細胞外のグルタミン酸濃度はグルタミン酸トランスポーターによって調節されており、それゆえ、虚血中に観察される細胞外グルタミン酸濃度上昇過程にはこのトランスポーターの機能不全が重要な役割を果たしていると考えられる。本年度は、グリア細胞型グルタミン酸トランスポーター(GLT-1)およびニューロン型グルタミン酸トランスポーター(EAAC-1)のノックアウトマウスをそれぞれ用いて、虚血性グルタミン酸濃度上昇機構におけるGLT-1およびEAAC-1の役割を明らかにした。GLT-1ノックアウトマウス、EAAC-1ノックアウトマウスおよび野生型マウスそれぞれの海馬CA1野にマイクロダイアリシスプローブを挿入し、虚血中の細胞外グルタミン酸を透析し、測定した。その結果、脳虚血開始後5分間は、GLT-1ノックアウトマウスの虚血性細胞外グルタミン酸レベルは野生型マウスのそれと比べて有意に高値であったのに対し、EAAC-1ノックアウトマウスの虚血性細胞外グルタミン酸レベルは野生型マウスのそれと比べてより低値になった。虚血開始10分以後では、GLT-1ノックアウトマウスの虚血性細胞外グルタミン酸レベルは野生型マウスのそれと比べて有意に低値になった。これらの結果から、虚血初期(5分間)では、GLT-1は正常に機能し細胞外グルタミン酸を細胞内へ取り込み、ニューロンに対して保護的に作用しているのに対し、EAAC-1は既にグルタミン酸の逆輸送を行い細胞外へグルタミン酸を放出していること、そして、虚血開始10分以後では、GLT-1もグルタミン酸の逆輸送を行い、ニューロン死発生を増悪させている可能性が示唆された。
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