2005 Fiscal Year Annual Research Report
成体脊髄に内在する神経前駆細胞を用いた再生誘導療法の開発に関する基礎的研究
Project/Area Number |
15390448
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
星地 亜都司 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70236066)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 真一 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所, 運動機能系障害研究部, 主任研究官 (30282560)
中村 耕三 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60126133)
|
Keywords | 脊髄損傷 / 神経前駆細胞 / 遺伝子導入 / 転写因子 / ニューロン / オリゴデンドロサイト |
Research Abstract |
本年度は、成体ラット損傷脊髄へのgreen fluorescence Protein (GFP)発現レトロウイルス導入と培養系の手法を用いて内在性神経前駆細胞の表現型の同定を試みた。 損傷後3日目のGFP陽性細胞は、多くがOlig2/Nkx2.2/NG2といったグリア前駆細胞のマーカーを発現していた。このGFP陽性細胞の性質を培養系で検討すると、neurosphere法により増殖し、これらマーカーを発現した状態でneurosphereを形成した。さらに、増殖因子非存在下に分化誘導すると、全てのneurosphere内でニューロン・アストロサイト・オリゴデンドロサイトが混在して観察された。すなわち、GFPレトロウイルスで標識された細胞が、培養系で神経前駆細胞の性質を保持していることが示された。 また、組織学的検討からは、損傷3日目の脊髄組織内でOlig2/Nkx2.2/NG2三重陽性細胞は、正常の約2倍に増加していた。一方で、内在性のMash1の発現は、損傷14日目に少数ながら出現したが、その後は減少した。 これまでグリア前駆細胞と考えられていたOlig2/Nkx2.2/NG2三重陽性細胞の少なくとも一部は、内在性神経前駆細胞の性質を示し、損傷に応答し増殖していることが示された。しかし、オリゴデンドロサイトへの分化は部分的であり、分化・成熟が抑制されている一因が分子レベルで明らかとなった。以上より、損傷脊髄内の神経前駆細胞は、細胞補充療法の源として、薬物療法や遺伝子導入などの人為的操作の対象となり得る可能性が示唆された。
|