2005 Fiscal Year Annual Research Report
腎癌の予後を規定するシアル酸転移酵素の役割とその発現調節機構
Project/Area Number |
15390483
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
斎藤 誠一 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80235043)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 信 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (70282134)
|
Keywords | 腎癌 / 前立腺癌 / RM2抗原 |
Research Abstract |
【目的】腎癌において癌化と関連しているST3Gal IIについては前年度報告したが、予後と関連しているST3Gal IVの研究は、ST3Gal IV発現の結果としてのマーカー分子の検索に苦慮したため、われわれが腎癌においてその発現を確認した糖鎖抗原であるRM2抗原(モノクローナル抗体RM2の認識抗原)の研究へ展開した。まず、114例の腎癌凍結標本においてRM2抗原の発現を調査した。さらに、RM2抗原は、最新のNMR技術により新規の糖鎖であるβ1,4-GalNAc-disialyl Lc4(RM2抗原)であり、ラクトシリーズI型糖鎖とガングリオシリーズ糖鎖の極めてユニークなハイブリッド構造をしているのが特徴である。ラクトシリーズI型糖鎖は上皮、腺に広く分布しており、ガングリオシリーズ糖鎖は神経外胚葉由来の細胞に豊富に存在する特徴がある。他方、前立腺癌は腺上皮由来の癌であり、PSAやPAP分泌などの上皮由来の性格を有していながら、臨床的にneuroendocrine differentiationが観察されることが特徴である。以上から、このハイブリッド構造と前立腺癌との関連が想定されたため、RM2抗原の発現を、前立腺全摘術を施行した前立腺癌75例において調べた。 【結果】腎細胞癌では、RM2抗原は114例中、15例(13%)において陽性であり、それらのうち、初診時転移がみられたのは9例、経過中に2例の計11例に転移がみられ、悪性度に強く関連していた。 一方、前立腺癌ではRM2抗原は良性腺管では発現しないか発現レベルが弱いこと、HGPINでは同一症例で比較した場合、RM2抗原発現レベルは癌部に比して弱いこと、前立腺癌の悪性度(Gleason pattern)を反映して発現が高くなること、特にGleason pattern 3と4ではその発現レベルに明らかな違いがあることが判明した。さらに、RM2抗原の高発現群では、低発現群に比して5年PSA無再発生存率が有意に低かった。 【結語】RM2抗原は腎癌ならびに前立腺癌において悪性度を反映していた。RM2抗原の構造を決定する糖転移酵素の一つであるα2,3-sialyltransferaseが、ST3Gal IIか否かについても今後検討する予定である。
|
Research Products
(1 results)