2004 Fiscal Year Annual Research Report
前立腺癌治療剤、リン酸エストラムスチンナトリウムによるテーラーメイド医療の試み
Project/Area Number |
15390485
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北村 唯一 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (70010551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 京一 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20272578)
久米 春喜 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (10272577)
西松 寛明 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60251295)
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Keywords | Single nucleotide polymorphism / Estramustine phosphate sodium / Prostate cancer / Cytochrome P450 / Tailor-made medication / Prostate cancer |
Research Abstract |
前立腺癌内分泌化学療法剤リン酸エストラムスチン(EMP)の副作用の発症には個体差があり、その発症リスクを個々の患者について予測可能にすることで、EMP療法のテーラーメイド医療化が実現すると我々は考えている。17β-estradiolはEMPの主要代謝産物であり、CYP1A1による水酸化を受けて2-hydroxyestradiolとなる。2-hydroxyestradiolはドパミン(D_2)受容体にantagonistとして作用し、消化器障害を抑制する可能性がある。そこで、CYP1A1遺伝子上の一塩基多型とEMP療法に伴う消化器障害との相関について検討した。 EMP療法を施行した前立腺癌患者85例中、治療中に何らかの副作用を発症した症例数は48例(66.7%)であった。内訳は肝機能障害33例、消化器障害(嘔気、嘔吐、食欲低下、胃痛など)29例、下腿浮腫23例であった。投与量に関係なく、消化器障害の発症頻度は140mg/day群34%(15例/44例)、280mg/day群34%(14例/41例)であった。遺伝子解析の結果、CYP1A1遺伝子上の一塩基多型であるm1、m2、IVS1-728多型においてマイナーアレルを持つ症例ではメジャーアレルホモ遺伝子型群に比べ消化器障害発症のリスクが約3分の1と低かった(m1,P=0.018;m2,P=0.025;IVS1-728,P=0.010)。さらに3つの一塩基多型の組合せによるハプロタイプ解析の結果、全てのアレルがメジャーアレルであった揚合の同リスクは9.6倍と有意に高く、少なくとも1つのマイナーアレルを持つことで、消化器障害のリスクは約0.1倍と低リスクになっていた(m1+m2+IVS1-728=T+A+G;オッズ比,9.599;95%信頼区間,3.125-29.490)。 以上の様に、m1、m2、IVS1-728多型の各遺伝子型にマイナーアレルを持つ症例では消化器障害の発症リスクが有意に低かった。それぞれの一塩基多型が実際にCYP1A1の酵素活性を変化させ、2-hydroxyestradiol産生が増加することで消化器障害が抑制されることが機能的に明らかになれば、個々のSNP解析やハプロタイプ解析の結果を根拠に、消化器障害のリスクの高い症例では制吐剤の予防的投与を行うことなどが可能になると考えられる。
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Research Products
(3 results)