Research Abstract |
本研究の目的は,現在,マウス-ヒト相同染色体領域からのヒト相同遺伝子の同定が可能であること,関節炎の発症を規定する遺伝子群が存在すること,膠原病病変発症の臓器特異性を規定する遺伝子座が存在すること,膠原病の病理組織学的な病像を規定する遺伝子群が存在する可能性があることなどのこれまで明らかとなった研究結果を基に,我々が作出した新しい関節リウマチ(RA)モデルマウスを用いて,RAの顎関節における病態および疾患感受性遺伝子の解析を試み,RAの顎関節病変の早期診断,予後判定,治療法の開発などに寄与することである.これまで我々は,膠原病好発系MRL/lprと嫌発系C3H/lprマウスを交配したMRL/lpr x(MRL/lpr x C3H/lpr)F1マウスに足関節の腫脹を示す個体を見出し,このN2マウスを始祖とする兄妹交配系のF44世代から10世代以上にわたり顕著に足関節腫脹を示す個体を選択的に交配させ,早期に関節強直を自然発症する近交系マウスMcH-lpr/lpr-RA1を樹立した.このマウスの顎関節に置いては,osteophyteの形成が認められ、顎関節疾患の新たなモデルとして期待できる.さらに最近,MRL/1prマウスのリンパ節腫脹を抑制する突然変異を見出し,その遺伝子を同定したが,このマウスとC3H系マウスのF1に関節強直が誘発されることが明らかとなった.平成17年度においては,これらのマウスの関節病変の病態解析をおこなったが,この関節病変は,肉眼的に高度の腫脹,変形を呈し,顕微鏡所見では,関節周囲の腱組織や関節腔内に,著明な軟骨増生および骨化を認め,また,この関節症に特徴的な遺様式は,両親系統に一つずつ存在する2個の常染色体優性感受性遺伝子座によることが示唆された.
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