2004 Fiscal Year Annual Research Report
誤嚥発生のメカニズムに関する口腔生理学的解析-摂食姿勢と咀嚼運動との関係-
Project/Area Number |
15390613
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
飯田 征二 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (40283791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 裕次 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (20190366)
古郷 幹彦 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (20205371)
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Keywords | 誤嚥 / 咀嚼 / 顎運動 / 咀嚼能率 / 姿勢 |
Research Abstract |
健常成人を対象に、下顎運動描記装置ナソヘキサグラフを用い、摂食運動での下顎運動の相違を検討した。 水平位での下顎は、座位での状態に比較し安静状態では顎関節は後方に位置し、閉口運動にて臼歯部での早期接触傾向が観察されたが、食物を含んだ咀嚼運動では下顎は安静状態と異なり、前方位にあり、座位と同様な咀嚼運動を営むことが確認された。しかしながら、筋活動の検討により、座位では開口筋である舌骨上筋群の活動は少なく、開口運動が下顎の自重が大きく関与する受動的運動であったのに対し、水平位では、筋活動の上昇が確認され、能動的運動であることが確認された。また、下顎運動との関係より前方位に下顎を常に位置させる必要から、前方運動の主たる役割を担う、外側翼突筋の持続的活動が要求されるものと考えられ、水平位での咀嚼運動における筋活動の必要性は座位に比較し大きいことが推察された。また、咀嚼ストロークは短くなり、食物の移動に制限があることが伺え、座位と同様の咀嚼能率を得るには、より多くの筋活動を必要とし、時として、疲労よりの不十分な咀嚼状態での食塊の嚥下を招くことが伺えた。 一方、摂食物の性状の違いによる下顎運動の相違では、咀嚼物が硬固物である場合は、作業側への下顎の動きが明瞭に観察されたのに対し、水分を多く含んだ食物では作業側への動きは小さく、また、一連の咀嚼運動の観察においても、嚥下相に近い状態での唾液の貯留による水分の多い環境段階では、咀嚼開始初期に比較してストロークならびに咀嚼作業側への動きは少なくなっていくことが観察された。以前に報告したごとく、水分の多い食物では軟口蓋が下制と舌根の挙上により咽頭への食物の流出を防ぐ運動が、咽頭口狭部で行われるが、これら口腔内の環境の変化に対応し、下顎運動が制限されたことを示すものと判断された。
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