2005 Fiscal Year Annual Research Report
救急初療看護提供システムに関する研究-アクション・リサーチ法による試み-
Project/Area Number |
15390675
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
坂口 桃子 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (40290481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
作田 裕美 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (70363108)
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Keywords | 救急看護 / 看護提供システム / アクション・リサーチ |
Research Abstract |
本研究は、救急初療看護において潜在する問題をあぶり出し、解決を図るとともに、効率的効果的な看護活動を可能にする先駆的な看護提供システムの構築を実現することである。研究者と実践者がともに問題状況に関与し、様々な研究手法を用いて現場の変革にかかわっていくアプローチとしてアクション・リサーチ法を採用し進めてきた。本研究で最も重視したことは、実践者の思いや願いを大切にし、共有するとともに、変革者は実践者であることを原則としたことである。研究開始時点で実践者が解決を望んだ課題は、(1)人材育成、(2)現任教育:リーダーナース編、(3)現任教育:新人ナース編、(4)医療事故防止とリスクマネジメント、(5)トリアージシステムの確立とトリアージナースの育成、(6)ドメスティック・バイオレンスへの対応、(7)臨床判断能力の育成であった。課題ごとに7つのチームを結成し、現状の分析、アクションプランの策定、試行、評価のプロセスを繰り返した。研究3年目の本年度は、課題(5)の取り組みの中で収集した5000件のトリアージ問診表を分析し、トリアージガイドラインを作成することと、過去3年間のアクション・リサーチがもたらした現場の変化をアクション・リサーチ法がもたらしたエンパワーメント効果として評価することを目的とした。しかし、トリアージ問診表の分析と実際の診察状況の突合せに時間がかかり、アンダートリアージ、オーバートリアージ等の実情把握にとどまり、3月時点でガイドラインの策定には至らなかった。次年度研究課題として科学研究費申請を行った。また、本年度の経過中に、当初の年次計画にはなかったが、課題(1)、(2)に関連して救急初療に勤務する看護師に求められる能力を明らかにしていきたいという現場からの声が上がり、文献を検討し、救急初療に勤務する看護師のコンピテンシーを質的に抽出した。また、課題(6)と関連して、救急における患者・家族からの暴力についても対処する必要があるという事から、暴力の実態と被害看護師の情動変化について調査を行い解決に向けた検討を行った。 研究者は3ヶ月に1〜2回のペースで施設を訪れ、実践者とともにアクションプランの実施状況について議論を重ねるとともに、常時E-mailによる相談に応じた。実施されたアクションプランは一定期間後に評価され、効果が確認された課題については関連学会および誌上で発表してきた。今後も引き続き「トリアージシステムの確立とトリアージナースの育成」を重要事項として取り組んでいきたい。日本には未だ救急患者用トリアージガイドラインがないため、諸外国の文献を参考にしながら当該施設の救急患者のデータを生かして日本版ガイドラインの作成を目指したい。
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