2005 Fiscal Year Annual Research Report
アイヌを中心とする日本北方諸民族の民具類を通じた言語接触の研究
Project/Area Number |
15401012
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中川 裕 千葉大学, 文学部, 教授 (50172276)
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Keywords | ニヴフ語 / アイヌ語 / ユカギール語 / エヴェン語 / 民具名称 |
Research Abstract |
3年目の今年度は、中心課題であるアイヌ語とニヴフ語に加え、それらに連なる東シベリアの民具名称の調査を行った。まず、平成17年6月26日から8月1日にかけて、研究協力者であるAA研非常勤研究員長崎郁が、ロシア共和国マガダン州セイムチャンにおいてユカギール語の民具名称調査を試みた。しかし、話者の健康状態などの問題で効果的には進められなかったため、エヴェン語の調査に切り替え、毛皮加工具などの名称についてデータを得た。次に研究協力者であるAA研非常勤研究員丹菊逸治が、9月9日から9月23日にかけてロシア共和国サハリン州ポロナイスクにおいて、ニヴフおよびウィルタ、ナーナイの民具名称の調査を行った。また、研究代表者である中川と研究協力者田村雅史が9月21日から9月25日にかけ、北海道静内町において、同町立シャクシャイン記念館等に保管されている民具類の調査を行ない、さらに、18年1月13日から15日にかけて、中川、丹菊、田村および、研究協力者の李林静が、北海道白老町のアイヌ民族博物館においてアイヌ楽器についての調査を行った。以上の調査によって漁労具、狩猟具、楽器といったそれぞれの分野で、民具の形状と名称は、それぞれが分野ごとに異なった分布を見せることが明らかになってきた。漁労具の場合は形状、名称ともに、ニヴフからさらに北方の諸民族に広がっているものが、北海道アイヌにまで共通してみることができるのに対し、狩猟関連具-とくに皮なめし加工具は、樺太アイヌにおいてごく一部が形態的に北方の諸民族と共通するのみであり、北海道アイヌには名称はもとより形状も関連したものがない。一方、楽器類はアムール川流域の諸民族とアイヌとの間に深い関連があるらしいことが明らかになってきた。
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