2004 Fiscal Year Annual Research Report
インカ国家とエクアドル南海岸域の関係をめぐる実証的研究
Project/Area Number |
15401027
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大平 秀一 東海大学, 文学部, 助教授 (60328094)
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Keywords | アンデス先史学 / 文化人類学 / インカ国家 / エクアドル海岸部と高地 / ソレダー遺跡 / 儀礼品の獲得 / 犠牲(生贄) |
Research Abstract |
2004年度の本研究課題では、研究計画に示した通り、エクアドル南部に位置するインカ国家の行政センターであるソレダー遺跡の発掘調査、周辺域の一般調査、出土遺物の整理・分類が実施された。 ソレダー遺跡の発掘調査は、広場北方に設けられているテラス群ならびに同地区の土壙を対象として実施された。この結果、テラスはインカ時代に建設された水をめぐる施設を埋め込んで構築されていること、極めて短期間ではあるがやはりインカ時代の居住に利用されていたことなどが明らかとなった。調査域におけるインカ国家のオキュペイションは80年に満たないものであるが、この時間的スパンの中で2時期が明瞭に確認された意義は大きい。これは、調査域におけるインカ国家の支配が人工的な破壊を伴う外的作用により終焉を迎えたという、これまでに得られている仮説を支持するデータでもある。土壙の発掘では、人骨の一部ならびに粗製土器の副葬品1点が出土した。表土の窪みによって同定可能な同質の土壙は、調査域で少なくとも3000は構築されており、これらがすべてインカ時代の墓である可能性が高まってきた。今後もさらにサンプルを増やしていく必要がある。 一方、周辺域において実施した一般調査では、儀礼施設や岩陰の墓などが検出され、ソレダー遺跡の規模の大きさが明らかになりつつある。出土遺物の整理・分析における最大の成果としては、2003年度の発掘で検出された墓が、犠牲に捧げられた少女を埋葬したものと同定されたことが挙げられる。遺跡のコンテクストは、「カパクチャ」という国家レベルの儀礼における犠牲を示した文書の記述と一致している。文書データと直接的に対比・考察が可能な「カパクチャ」の出土資料が確認されたのは、世界ではじめてのことである。 次年度以降も、入念な調査・研究を継続し、本研究課題の主目的であるインカ国家とエクアドル海岸部の関係解明に向かいたい。
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Research Products
(5 results)