2005 Fiscal Year Annual Research Report
インカ国家とエクアドル南海岸域の関係をめぐる実証的研究
Project/Area Number |
15401027
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大平 秀一 東海大学, 文学部, 助教授 (60328094)
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Keywords | アンデス先史学 / 文化人類学 / インカ国家 / トメバンバ西方 / ソレダー遺跡 / 国際情報交換 / エクアドル |
Research Abstract |
2005年度の本研究課題では、研究計画に示した通り、エクアドル南部に位置するインカ国家の行政センター・ソレダー遺跡の発掘調査、周辺域の一般調査、出土遺物の整理・分類を実施した。 ソレダー遺跡の発掘調査は、バーニョ・デル・インカ東方の丘頂上付近(セロ・サラル)、倉庫(コルカ)群を配そうとした大型テラス、聖なる岩陰(マチャイ)、土壙群等を対象として実施された。 セロ・サラルの発掘は、水をめぐる施設に対する若年者の犠牲を埋葬した墓の検出を目的として実施された。結果的に墓の検出には失敗したが、祭壇が確認された。倉庫に関しては、入念に大型テラスを準備しておきながら、建設を終えていないことが明らかとなった。これは、ソレダー遺跡が建設途上で放棄されていることを再確認させるデータである。聖なる岩陰の発掘では、インカの人々が自然の岩陰ではなく、自然岩を人工的に加工して岩陰を造り出していることが明らかとなった。調査域で3000以上確認されている土壙群では、新たに4基の発掘を行って完全な人骨を検出し、これらが墓であることが明瞭に確認された。これらの墓は、インカ国家と地方社会間の大規模な戦闘をめぐって造られたものと判断される。16世紀の文書には、多様な地域でこうした類の戦闘が生じたことが記述されている。その痕跡が遺跡で実際に検出されたのは、学界で最初のことである。戦闘の詳細な状況を解明するため、今後もさらに発掘データを増やしていく必要がある。 一方、一般調査では新たに聖なる岩陰などを検出した他、インカ国家に属する人々が、海岸部方向に向かって標高1000m付近まで居住していたことが明らかとなった。出土遺物の整理・分析は、ムユプンゴ遺跡出土遺物と比較・対照しながら基礎的作業がなされた。 次年度以降も、入念な調査・研究を継続し、本研究課題の主目的であるインカ国家とエクアドル海岸部の関係解明に向かいたい。
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Research Products
(3 results)