2003 Fiscal Year Annual Research Report
実践としてのエスノサイエンスと環境利用の持続性-中国における焼畑農耕の現在-
Project/Area Number |
15401037
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
篠原 徹 国立歴史民俗博物館, 民俗研究部, 教授 (80068915)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅崎 昌裕 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (30292725)
西谷 大 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 助教授 (50218161)
大場 秀章 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (20004450)
吉村 郊子 国立歴史民俗博物館, 歴史研究部, 助手 (50332119)
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Keywords | 雲南省 / 海南省 / エスニックグループ / 環境保護政 / 焼畑の禁止 / 換金作物の導入 / マーケット / 棚田 |
Research Abstract |
本年度は中華人民共和国雲南省と海南省で調査をおこなった。 雲南省では中国雲南省紅河哈尼族彝族自治州、および西双版納タイ族自治州において、タイ族・ハニ族・ヤオ族・イ族・ラフ族の生活環境概況調査をおこなった。その結果をもとに、紅河哈尼族彝族自治州金平県者米ラフ族郷内でヤオ族の村である梁子塞ヤオ塞とハニ族の村である格馬村、および元陽県内でハニ族の村である生村を調査地として選定した。者米ラフ族郷の調査では者米でおこなわれる6日に1度のマーケットとの関係に注目しながら調査をおこなった。調査から次のことがわかった。焼畑は政府の環境保護政策により禁止され、ほとんどおこなわれなくなった。代わって、政府によってもたらされた換金性の高いパラゴム、レモングラス、草果とよばれる香辛料などが各エスニックグループによって栽培され、また棚田の開発がすすめられている。これちの換金作物はとくに焼畑に依存し移動生活をしてきたラフ族では定住化政策とともにもたらされたものであったが、実際のところはあまりうまく機能していない。また、我々は棚田の開発ついて歴史的コスト、つまり長い時間をかけた技術や文化の蓄積のもとで開発されてきたものであると考えてきたが、短時間で簡単に開発できるものであることがわかった。このことは、我々が中国の自然資源の利用について考えてきたイメージを覆す発見であったといえるだろう。また、者米のマーケットの調査において、マーケットに集まってくる人びとが何を売り何を買っているかについて具体的なデータをとることができた。 海南島の調査では、保力村、初保村、水満村において住み込み調査をおこなった。調査の結果、政府の環境保護政策と換金作物の導入により彼らの食生活が変化してきたことがわかった。以前は水田周辺の雑草や山の資源などが利用されていたが、現在ではほとんど利用されなくなり多くの食品の入手をマーケットからの購入に頼っていることが明らかになった。
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