2006 Fiscal Year Annual Research Report
実践としてのエスノサイエンスと環境利用の持続性-中国における焼畑農耕の現在-
Project/Area Number |
15401037
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
篠原 徹 国立歴史民俗博物館, 研究部, 教授 (80068915)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大場 秀章 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (20004450)
西谷 大 国立歴史民俗博物館, 研究部, 助教授 (50218161)
梅崎 昌裕 東京大学, 大学院医学系研究科・人類生態学教室, 助教授 (30292725)
吉村 郊子 国立歴史民俗博物館, 研究部, 助手 (50332119)
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Keywords | 焼畑 / 斜面畑 / 余剰米 / 換金作物 / 生業戦略 / 定期市 / 交易 / 生業複合体 |
Research Abstract |
海南島においては,今年度も保力村を中心に現地調査を実施した。具体的には,保力村における各世帯過去20年間土地利用の変化,それにともなう人口及び食料供給のデータを収集した。これまで保力村においては,1980年代半ばから,換金作物導入が初めて導入されて以来,その開発状況によって,2段階に分けることができる。最初の成功世帯が現れるまでの第一時期(1985-1994)と現れた後の第二時期(1995-2005)である。そして換金作物導入のプロセスにおいて、ある個人の成功というエポックイベントが、村落レベルで換金作物の受容がすすむ重要な要因になっていることが明らかになった。1998年を境にして、ほとんどの世帯が換金作物栽培を集約化させていった。そしてエポックイベントの後の時期(1995-2004年)を対象にした分析では、換金作物畑の開発に影響する世帯要因が変化したことがわかった。今回の調査で換金作物の導入のプロセスにかかわる詳細なデータを収集できただけでなく、これまでデータの少ない地域における食事調査や生活時間調査を実施することができた。さらには、地理情報システムやリモートセンシングを利用することで、定量的な環境評価・土地利用変化と人々の活動を結びつけて分析することができた。 雲南省金平県者米ラフ族郷・老集寨郷内では昨年度のハニ、アールー、ヤオ、タイ、クーツォン族に加えて今年度は、ハニ族の村である高寨と牛籠でも調査を実施した。村落の生業変化をさぐるため、衛星画像を活用しながら土地利用のデータを収集してきたが、6つの村において同等のレベルのデータを収集することができた。この地域では9民族が、伝統的に焼畑、棚田、狩猟採集という生業を複合的におこなってきた。現在、政府の政策によって山の焼畑は禁止され、棚田や換金作物畑への転換が進んでおり、焼畑農耕の重要度は低下しつつあるようにみえる。これまでの調査で、山の斜面地で生産性を高めるには、伝統的な焼畑、棚田を組み合わせた複合的な土地利用の方法と技術が不可欠なことが明らかになった。今年度の調査では、者米谷は、多様な生態的な環境が存在するのだが、それを各民族・村は、多様な生態的な環境を、特定的・選択的に利用または占有していることが明らかになった。そして各民族・村は生態的な環境の差異性を生業戦略に転化し、生業に差異を創出させ、多様な生業戦略が集合し相互に補完しあうことで、生業複合体を形成している。さらに市を介し生業戦略の差異化が促進され、生業複合体はより強固に進展していることを明らかにした。
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Research Products
(5 results)