2003 Fiscal Year Annual Research Report
地域間経済格差是正と環境改善の最適地域マネジメントのあり方 -中国寧夏回族自治区における退耕環林政策とその影響を事例に-
Project/Area Number |
15402002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
保母 武彦 島根大学, 法文学部, 教授 (70127497)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中林 吉幸 島根大学, 法文学部, 教授 (90237371)
藤原 勉 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (00023474)
井口 隆史 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (70032604)
伊藤 勝久 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (80159863)
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Keywords | 西部大開発 / 退耕還林 / 封山禁牧 / 環境保全 / 農村経済 / 近代化過程 / 放牧 / 舎飼い |
Research Abstract |
本年度は寧夏南部山区の固原市及び彭陽県で農家調査,市県級政府の調査及び草地と舎飼メンヨウの栄養調査を実施した.(1)社会経済面では,西部大開発政策とそれに関連する退耕還林政策により農村社会は急激な変化に晒されている.村落固有の立地条件を考慮しながら現時点で想定される農村の発展方向性については次の点が指摘できる.全体的には,「労働市場が未発達で従来型の粗放な農業に従事している段階」から「労働市場が発達し,就業機会も増加し,農業もそれに伴い集約的なものに変化した段階」へと農民経済が移行している.一般に農村の近代化とは,農業の集約化と余剰労働力の他産業就業・部分的な離農としてとらえられてきた.その際の過渡的段階として,在村での自営兼業が発展する.これは現在の退耕還林未実施の都市部近接地域や退耕還林を実施した都市部からの遠隔地域の状況が当てはまる.将来,地方都市の労働市場や経済の影響が拡大し,徐々に遠隔地域まで及んできた際には,農業の集約化と離農・離村が同時に起こると考えられる.ただし,その攪乱要因として退耕還林政策と封山禁牧政策がある.即ち農民にとっては強制的であるが環境保全的な政策として機能するという意味でも,退耕還林後の補償が将来にわたって明確に予測できないという意味でもある.さらに農民に自発的に他産業従事や新農業を開拓させることも重要であるが,環境に大きな悪影響を及ぼさない限り,十分な「離陸期間」を確保するために,抜本的改革よりも従来型農業の小改変も必要であると考えられる.(2)草地の養分調査及びメンヨウの栄養調査からは,封山禁牧政策により全て舎飼いになったことにより十分な栄養が得られなくなってきている.かつては放牧のためカルシウムの適切な摂取により良質の肉が得られていた.舎飼いで餌を与えるには基本的知識と技術が必要であるが十分とはいえない.畜舎の衛生状態も検討の余地がある.
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