2005 Fiscal Year Annual Research Report
アジアデルタ地帯の総合地盤環境保全ストラテジーに関する研究
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15404026
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
六川 修一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (50183710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 泰邦 独立行政法入産業技術総合研究所, 地質調査情報センター, 地質調査企画室・室長(研究職) (70356624)
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Keywords | リモートセンシング / チャオプラヤデルタ / マングローブ / 海岸侵食 / ストラテジー / 航空写真 / 画像解析 / エビ養殖場 |
Research Abstract |
アジアデルタ地帯の沿岸環境は、海水準の変化、土砂供給・流出、地盤沈下、波浪、潮位変化などにより影響を受け、刻々と変化している。特に本研究で対象としたタイ国チャオプラヤ川河口域では、深刻な海岸浸食の危機にさらされているが、現在のところ海岸浸食問題に対する抜本的な対策は行われていない。本地域の平成15,16年度における1987年から2000年までの衛星データの解析からは、海岸浸食の原因としてマングローブの伐採、エビ養殖場の汚染・放置、地盤沈下、土砂供給量の減少、および海水準の上昇が挙げられ、沿岸環境システムにそれぞれの原因が複雑に絡み合っていることが解明された。本年度の研究では沿岸環境問題の中でも海岸浸食問題を中心に据え、海岸浸食と個々の原因要素との関係という視点で沿岸環境について解析を進めた。特に1950年代の航空写真を近年の衛星データと比較可能なレベルまで向上させる処理技術を確立し、1950年代から現在まで半世紀以上にわたる時系列解析から海岸線の変動の様子を明示し、より信頼性のある海岸浸食の原因を究明し、沿岸環境マネジメントに関する提言へとつなげた。海岸線の変動と人間活動の歴史を見比べると、それぞれの時代における海岸線の前進と後退の原因について説明することができ、これらの結果をもとに、チャオプラヤ川河口域の沿岸環境マネジメントに関する指針として、「海岸浸食をいかに食い止めるか」ではなく、「放置・汚染されたエビ養殖場跡である閉水域をどの様にすべきか」という課題の転換を提言するに至った。
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