2004 Fiscal Year Annual Research Report
高緯度北極域陸上生態系における炭素循環の時空間的変動の機構解明と将来予測
Project/Area Number |
15405012
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中坪 孝之 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助教授 (10198137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神田 啓史 国立極地研究所, 北極観測センター, 教授 (70099935)
小泉 博 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 教授 (50303516)
大塚 俊之 茨城大学, 理学部, 助教授 (90272351)
内田 雅己 国立極地研究所, 研究教育系, 助手 (70370096)
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Keywords | 高緯度北極 / 炭素循環 / 氷河後退域 / 光合成生産 / メタン / 微生物バイオマス / リン脂質脂肪酸 / 遷移 |
Research Abstract |
現地の盛夏に相当する7月中旬から8月中旬にかけて、3名(大塚と研究協力者2名)が高緯度北極スバールバールに滞在し調査を行った。本年度は、炭素循環の広域的な評価の基礎となる遷移段階ごとの光合成生産、メタン発生速度を中心に研究を行い、微生物バイオマスについても研究を行った。おもな成果は以下の通りである。 1.調査地を代表する維管束植物としてSalix polaris, Dryas octopetala, Saxifraga oppositifoliaの3種を調査対象とし、光合成、呼吸特性を光合成・蒸散測定装置を用いて調べた。葉バイオマスあたりの最大光合成速度はSalix, Dryas, Saxifragaの順に高く、生育地の光量子密度のデータを用いて日積算光合成量を推定した結果もSalixが最も高かった。遷移段階に沿った種の分布様式および光合成特性から、遷移初期の生態系での炭素吸収にはSaxifragaが重要な役割をもち、さらに遷移が進んだエリアではSalixが重要な役割をもつことが示唆された。 2.調査地におけるメタンの発生状況とそれに与える環境要因の影響を調査した。氷河後退域の2本のラインに沿って20mおきにチャンバーを設置し、真空バイアルビンを用いて土壌から放出される空気を採取した。採取した空気サンプルは日本に持ち帰り、メタン濃度をガスクロマトグラフィーで混定した。メタンの発生速度は場所により大きく異なり、メタンを発生している地点から吸収している地点まであった。メタンの発生速度と土壌化学特性との間には明瞭な関係は認められなかったが、土壌呼吸速度との間には正の相関が認められた。 3.現地で採取された土壌について、微生物バイオマスの指標となるリン脂質脂肪酸の分析を進めている。また比較のため、カナダの高緯度北極で採取された土壌についても同様の分析を行い、遷移と微生物群集との関連について検討した。
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Research Products
(1 results)