2004 Fiscal Year Annual Research Report
北欧のオルタナティブファーミングに見る21世紀型人間家畜共生システム:家畜福祉を考慮した持続的家畜生産は可能か?
Project/Area Number |
15405032
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
谷田 創 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助教授 (20197528)
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Keywords | オルタナティブファーミング / オーガニックファーミンフ / 食の安全 / 家畜 / 家畜の福祉 / 北欧 / 人と家畜との関係 |
Research Abstract |
スウェーデンは、森林地帯が国土の半分以上を占める、EUの中では最大の林業国である。一方、農用地については全国土面積の約7%を占めるに過ぎないが、食料自給率は、カロリーベースで90%を達成している。スウェーデンはデンマークと同様に、従来の農業とは理念においても方法においても異なるオルタナティブ農業、特にオーガニック農業に活発に取り組んでいる国の一つである。デンマークにおけるオーガニック農業への取り組みが国家主導であるのに対して、スウェーデンではKRAVという法人組織が主体となってオーガニック市場を取りまとめている点が特徴的であり、KRAVの果たしている役割は非常に大きい。そこで本研究では、筆者らの実施したKRAVに関する調査を中心に、スウェーデンのオーガニック農業についてその一端を明らかにすることで、今後のわが国におけるオルタナティブ農業及びオーガニック農業への取組みのための一助となることを目的とした。 デンマークやスウェーデンにおいてオーガニック農業が市民権を得て、大きな広がりを見せてきた理由は、オーガニック農家やKRAVの努力、政府の支援に加えて、消費者の食と農への関心の高さがその背景にあると考えられる。スウェーデンが、EUの中でも唯一のBSEフリーの国であることも消費者と農との結びつきを感じさせるものがある。消費者の食と農に対する意識の高さが大きな力となり、それが小さな団体で行われていたオーガニック農業運動と結びついてKRAVの設立を後押しし、政府を動かしたのである。また、消費者の食と農に対する要求は、食の安全性であり、また環境への配慮でもある。それらに対する需要がオーガニック農産物の供給を必然的なものとしたところから、オーガニック農業が農業ビジネスへ展開できたのであり、消費者が食に対して、質よりも量を望み、より安価なものを望んでいる限りは、家畜福祉を考慮した持続的家畜生産の実現は難しいと考えられる。
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Research Products
(1 results)