2003 Fiscal Year Annual Research Report
ネパールにおけるマラリアに対する遺伝的適応の調査研究:文化的適応との対比を通じて
Project/Area Number |
15406009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 茂 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30087150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱野 真二郎 九州大学, 大学院・医学研究院, 助手 (70294915)
白川 卓 神戸大学, 医学部, 助教授 (30171044)
西山 馨 神戸大学, 医学部, 教授 (00150061)
渡部 幹次 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (70325679)
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Keywords | マラリア / 異常ヘモグロビン症 / αサラセミア / G6PD欠損症 / ネパール / マラリア仮説 / 三日熱マラリア / 熱帯熱 |
Research Abstract |
1.現地調査 (1)当初は2003年9月に現地調査を予定し、準備を進めていたが、直前の8月下旬にネパール共産党毛沢東主義派(通称マオイスト)が政府との休戦協定を破棄し、攻勢を開始した。ネパール側の共同研究者に調査の実施を打診したが、困難とのとのことで、いったんこれを延期した。そのご現地協力者に状況を問い合わせたところ、安全上の問題はなくなったということで、12月にカブレ郡マハデブスタン村の小中学校で調査を実施した。全225名の児童生徒に対し、マラリア感染に関する問診、脾臓肥大などに関する触診をおこなうほか、223名より血液サンプルをえた。なお、三日熱マラリアに感染して発病中の患者より採血をこころみたが、熱帯熱マラリアで発熱している患者しか発見できず、平成16年度の夏期の調査に際し、再度おこなうこととした。 (2)本年度は当初2回の調査を予定していたが、第1回調査の延期のため、第2回は本格的な調査が困難となり、規模を縮小して、2004年2月にαサラセミアの赤血球に対するマラリア原虫の感染実験のためのサンプル収集を実施した。平成13年度までの調査によって、αサラセミアについてホモ・ヘテロさらに健常であることがわかっている住民計8名より採血し、トリブバン大学教育病院検査部でこれを処理し、無菌状態で日本に持ち帰った。 2.サンプルの分析 (1)2003年12月の調査でえられたサンプルついては、住民の遺伝的特性に関する検査を神戸大学医学部、マラリア感染に関する検査を九州大学医学部で実施することにしている。 (2)2004年2月にサンプリングした赤血球については、現在大阪大学微生物病研究所でマラリア原虫の感染実験を実施中である。 3.これまで収集したサンプルの分析と研究結果の発表 (1)平成13年度までに収集したサンプルの分析を進め、とくにフィラリア症の感染頻度については論文を発表した。 (2)マラリアに関連した研究では現在二つの論文を準備中である。その一方は調査地付近の住民における異常ヘモグロビン、サラセミア、G6PD欠損症等の頻度とマラリアのendemicityの関係を見るものでマラリア仮説を支持する結果をえている。他方はαサラセミアについて、ホモ・ヘテロ・健常の住民のマラリア感染頻度を比較するもので、健常者では有意に高い感染頻度を確認している。 (3)調査地付近の民族集団、タマンとダヌワールについて、TNFαプロモーター領域および唾液腺に関する遺伝的多形性を長崎大学熱帯医学研究所で検査し、両者は大きくちがうことが確認された。
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Research Products
(1 results)