2005 Fiscal Year Annual Research Report
旧ソ連のプルトニウム吸入作業者とトロトラスト症患者の病理学的比較
Project/Area Number |
15406010
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福本 学 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60156809)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 雄一 (財)癌研究会, 癌研究所, 主任研究員 (80222975)
|
Keywords | 放射線発癌 / プルトニウム / トロトラスト / 内部被ばく / ヒト / 血管肉腫 / 中皮腫 / α線 |
Research Abstract |
第二次大戦中に使用された血管造影剤トロトラスト(Th)は注射されると、主に肝に沈着する。被注入患者(Th症)は、α線の長期暴露によって肝悪性腫瘍を発症する。その中で血管肉腫(AS)の相対リスクが際立って高い。旧ソ連のプルトニウム(Pu)製造工場マヤクでα線被ばくした患者の病理組織標本は、ロシア南ウラル生物物理研究所(SUBI)に保管されている。ThとPuの発がんの分子機構を明らかにすることは、ヒトにおける放射線の発癌機構の解明につながる。マヤクでは、Puが肺から吸引されたにも拘わらず肝にも悪性腫瘍を発症した。これらの肝腫瘍のうち、血管肉腫(AS)は放射線被ばくの指標腫瘍であることが明らかとなった。 昨年に引き続き、肝ASでThとPuの分布を確認するため6ヶ月にわたる超長期露光したオートラジオグラフィーを作製した。その結果、Th由来のα線トラックは殆ど、Thを貪食したマクロファージから発しており、その他の細胞や組織からのものは見られなかった。Pu由来のαトラックは肝実質細胞由来であった。興味深い所見としてTh症肝内胆管癌では、Thの沈着が明らかであるにも拘わらず、α線は殆ど観察されなかった。所見を集計するために現在、他の症例でもオートラジオグラフィーの露光を行っている。 我々の集積したト症肝腫瘍238例について検索したところ、投与時に血管外へ漏れたトロトラストによって3例に悪性中皮腫が発症していた。平成17年12月にSUBIを訪れ、同所で保存されている組織を検討したところ、計7例に肺悪性中皮腫を見出し、これらの組織ブロックを借り出した。現在、薄切切片を作成したところで、アスベスト症中皮腫例を集積しつつある。今後、SV40ビールスの存在や細胞増殖因子の免疫染色を用いて、アスベスト症中皮腫との異動を検索することによって、放射線発癌の分子機構を明らかにする。
|
Research Products
(6 results)