2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15406030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
山内 博 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (90081661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
網中 雅仁 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (30231997)
熊谷 嘉人 筑波大学, 医学部, 教授 (00250100)
世良 耕一郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00230855)
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Keywords | 慢性砒素中毒 / 発癌性 / 角化症 / 砒素汚染 / 井戸水 / 根絶 / 予防対策 / 中国 |
Research Abstract |
中国における慢性砒素中毒患者および発症過程の高濃度砒素暴露者の推計は約300万人に達し、7省の地域で確認され、このうち内蒙古自治区と山西省に多発地域がある。世界の過剰砒素暴露者と患者の推計は約5000万人であり、問題の重要性は多くの国で理解されている。我々の調査地域は内蒙古自治区の包頭市にある、人口2080名のガンファンジン村に住む患者(村民の20-30%)に対する継続的な観察を続けている。今日、慢性砒素中毒の治療法と予防に効果がある手法は研究段階にあり、国際的な指針の確立が望まれており、さまざまな国際機関や研究者の活動が続いている。 本研究の目的は中国における慢性砒素中毒の根絶と予防対策の確立であり、その研究成果が国際的に活用されることである。慢性砒素中毒患者においては、次の3つの問題が重要な課題と考えている。慢性砒素中毒患者の主要な症状は角化症、色素沈着、皮膚癌、末梢神経炎、循環器障害などで、このうち、突起状の角化症は掌と足の裏に発生し、日常の生活や労働が困難になるほどの痛みを伴うことから、この重度な角化症の改善が急務であり、また、皮膚癌や肺癌の予防へのリスク評価法の確立が望まれている。 平成15年度の研究において、慢性砒素中毒の改善法の基本は砒素暴露量の調整で、最小影響量の1/10量の砒素暴露(<100μg/day)による効果の検証を国際的にも最初の試みを行った。この検証作業を科学的に実施するため、包頭市衛生局の地方病担当者によるきめ細かい飲料水摂取指導がなされた。この1年間、村民は砒素暴露量を<100μg/dayに制限された。ガンファンジン村に住む患者群の角化症の改善経過を観察した結果、重症者の改善は顕著であった。同時に、尿中砒素濃度による暴露量を推測したが、砒素暴露期間中に比較して凡そ1/2-1/3に減少していた。さらに、砒素暴露とDNA損傷の関係を尿中8-OH d G濃度で評価した結果、砒素暴露の軽減により、DNA損傷の回復が明確に認められ、この効果が得られるまでの時間は約1年と長期の時間であった。しかしながら、今後の活動における、発癌性のハイリスク群の選別、この選別の意義は、膨大な対象群の絞込み・長期観察群の選択につながる科学的根拠に期待される。砒素暴露の軽減は将来の発癌性リスクの軽減につながるものである。患者群や中国行政者への保健指導において、その効果を数量化して説明が可能性になりつつことは意義深いと考えている。 現在、中国の砒素の飲料水基準(0.05ppm)を満たす飲料水を給水しているが、軽症者は慢性砒素中毒の問題認識が低く、各家庭にある砒素汚染の井戸水の使用を繰り返している実態が存在し、本件のような問題の解決には保健衛生の社会への定着の重要性が認識された。また、砒素暴露量の調整に加えて、更なる、強制的な砒素の体外排泄効果などに関する研究領域の必要性を強く感じた。
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