2003 Fiscal Year Annual Research Report
直交行列の数値最適化問題の新解法とブラインド信号分離問題への応用に関する研究
Project/Area Number |
15500129
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 功 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (50230446)
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Keywords | ブラインド信号分離 / Stiefel manifold / Dual Cayley変換 |
Research Abstract |
1989年にCardosoらにより、"ブラインド信号分離問題(統計的に独立な複数信号の合成結果から独立成分を分離推定する問題)"と"行列の同時対角化問題"(複数の行列を共通の直交行列によって対角化する問題)の関係が明らかにされて以来、「Stiefel manifold St(N,N)$(N×N直交行列全体の集合)上の行列最適化問題」が信号処理研究者をはじめとする数理工学者の注目を集めている。St(N,N)は非凸集合であるため、この最適化問題には、これまでの制約付数値最適化法の多くの手法はそのまま利用できない。この問題に対するこれまでの代表的なアプローチは、標準的な降下型アルゴリズムの各ステップに"測地線の追跡"や"距離射影"といった"補正処理"を追加するものであった。これらの手法は、Stiefel manifoldを局所的に近似するパラメータ空間で、降下方向を算出し、これを補正処理することによって理想的な降下方向の近似値を求めており、一般に理想的な降下方向には一致しない。更に、Stiefel manifoldは、非凸集合であるため、各ステップで高精度な補正処理の実現は困難である。 本研究では、Stiefel manifold上の行列の数値最適化の新手法を提案し、その性能を明らかにするとともに、これをブラインド信号分離問題に応用することを目的としている。まず、Stiefel manifoldが多次元球の表面に相当する極めて特殊な非凸集合になっていることに注目し、この集合の大域的なパラメータ表現を与えることを検討している。この結果、初等複素関数論に現れる双一次変換を正方行列の空間に一般化したDual Cayley変換を提案し、これを用いることにより、Stiefel manifold St(N,N)は、測度0の例外集合Eを除いて、歪対称行列の空間Q(N,N)に1対1に対応付けられ、St(N,N)は、2つのR^{N(N-1)/2}によって完全にパラメータ表現できることが示される。次に、このパラメータ表現を用いることにより、St(N,N)上の行列最適化問題は、制約のない2つの最適化問題に帰着され、多くの標準的な降下型アルゴリズム(Cayley変換域の最急降下法と"Cayley変換域のニュートン法など)が直接利用可能となることがわかる。その結果、これまでの手法が用いてきた"補正処理"は不要となり、効率的で信頼性の高い数値最適化アルゴリズムが実現される。最後に、数値実験により、提案法と補正処理に基づく従来の手法との性能比較を行い、提案法のアイディアによってもたらされる効果を確認するとともにブラインド信号分離問題への応用可能性を明らかにすることを目標とする。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Isao Yamada, Takato Ezaki: "An orthogonal matrix optimization by Dual Cayley Parametrization Technique"Proceedings of 4th International Symposium on Independent Component Analysis and Blind Signal Separation --- ICA2003. (CD-ROM). (2003)
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[Publications] Isao Yamada, Elbadraui Jamal: "Locally reduced-rank optimal filtering and its approximation by successive alternating minmization"Proceedings of IEEE ICASSP2003. (CD-ROM). (2003)
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[Publications] Isao Yamada, Takuya Okada: "A note on robust adaptive Volterra filtering based on parallel Subgradient projection techniques"IEICE Transactions Fundamentals. E86-A-8. 2065-2068 (2003)
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[Publications] K.Slavakis, I.Yamada, K.Sakaniwa: "Computation of symmetric positive definite Toeplitz matrices by the hybrid steepest descent method"Signal Processing. 83-5. 1135-1140 (2003)
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[Publications] 山田 功: "射影型適応アルゴリズムの新展開---射影劣こう配法による統的視点とその応用"電子情報通信学会誌. 86-8. 654-658 (2003)
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[Publications] N.Ogura, I.Yamada: "A non-strictly convex minimization over the bounded fixed point set of the nonexpansive mapping"Numerical Functional Analysis and Optimization. 24-1&2. 129-136 (2003)